「初めの日本人ってのがいい」 LIVゴルフにシード参戦する香妻陣一朗

憧れの地に戻ってきた(撮影/服部謙二郎)

◇LIVゴルフリーグ◇マヤコバ 事前(31日)◇エル・カマレオンGC(メキシコ)◇7116yd(パー71)

「もうずっと戻ってきたかったんです、この舞台に」。2月なのに日差しが強く、汗ばむ陽気のメキシコのリゾート地。香妻陣一朗は、LIVゴルフでフルシーズン戦える喜びをそう語った。2022年に「LIVロンドン」を含む3試合に出ていたときから「ここで戦いたい」とずっと思い続けてきたという。

当時はLIVゴルフに出ると批判を浴びるような時期でもあったが、「めちゃくちゃいいっす。こんな試合ないっすよ」と魅力しか感じなかった。ワールドクラスの選手たちと戦える。3日間競技で負担も軽く、予選落ちもなく、たとえ最下位でも賞金12万ドル(約1750万円)が手に入る。移動費や宿泊費も、キャディの分まで全部負担してくれる。「予選カットがない時点でまず気持ち的に楽じゃないですか? 日本からPGAツアーとかに出たらやっぱり費用もかさむし、やっぱり稼がなきゃっていう焦りも出るし…。 そういうのがないんでアグレッシブにいけるんです」。プロゴルファーの本質のひとつ、賞金稼ぎの点では、LIVのシステムは魅力以外の何物でもないのだろう。

団体戦のチームは「アイアンヘッズ」(撮影/服部謙二郎)

米ツアー(PGAツアー)や欧州ツアー(DPワールドツアー)に出られなかったり、世界ランキングに加算されないなどの懸案もあるが、「もうためらいとかなかったですよ。確かに最初はちょっと(批判なども)ありましたよ。でもいろんなリーグがあっていいと思うんですよね。僕はそういう考えでもいいかなって」。

2年前に3試合のLIVゴルフ参戦後からアジアンツアーに出始めたのも、すべてはLIVにもう一度出たいがため。「アジアンツアーの年間王者には、出場権が得られるって聞いたんです」。同年に出場3試合だけだったアジアンツアーでシード権をとり、昨年は12試合を戦った。年間王者は適わなかったものの、12月のLIVゴルフのQT(予選会)に出て2位に入り、念願の出場権を勝ち取った。

奥にはダスティン・ジョンソンも…顔ぶれは半端ではない(撮影/服部謙二郎)

「日本人として初めてLIVゴルフにシードで参戦することが、僕としてはすごくうれしいんです。“初めの日本人”っていうのがいいですよね」。QT会場ではアジアや欧州の選手から「日本の選手はQTの資格を持っている人もいるのに、なんで受けないんだ?」と言われた。挑戦者は香妻と比嘉一貴だけだった。欧米ではLIV志向の選手も多く、大学ゴルフ部で活躍し、嘱望されるようなトップアマにもいる。一つの選択肢としてLIVゴルフがあったっていい―。そう考える人は増えている。「LIVに出たい人は多いから、多分この先どんどんと門が狭くなると思っています」。だからこそ、日本人の先駆者になったことに価値があると考えているのだ。

「ブイブイ言わせたい」と練習ラウンドをこなす(撮影/服部謙二郎)

練習場で球を打っていると、目の前にジョン・ラームがいて、後ろでダスティン・ジョンソンが打っている。そうそうたるメンバーだが、「まあ、もうメンバーに入ってしまえばみんな一緒なんで。すごい選手たちと一緒に回っても気おくれしないと思うんです。全然堂々とやれると思います」と雰囲気も楽しんでいる。

もちろん出るだけで満足はしない。しっかり結果を出したい。「もうブイブイ言わせたいですよね。アイツまじか?いけちゃうの? そう思われたいです」。戻ってきた夢の舞台で大暴れするつもりだ。(キンタナロー州プラヤデルカルメン/服部謙二郎)

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