クレジットカード市場に関する調査を実施(2023年)~キャッシュレス決済の浸透や法人分野への利用領域拡大を背景に、2028年度のクレジットカード市場規模は約158兆円を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、クレジットカード市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年度のクレジットカード市場規模(カード会社の自社発行カードのショッピング取扱高ベース)は、約89兆円まで拡大した。

コロナ禍の行動制限の解除により低下していた旅行、外食、レジャーのほか、ETCやガソリン等でのクレジットカードの利用頻度が回復した事などにより、クレジットカード市場規模は拡大した。

2023年度も拡大基調で推移する見込みではあるが、物価上昇など外部環境の変化がクレジットカード発行会社の業績にどのような影響を与えるか、注視する必要がある。

2.注目トピック~金融サービスとの連携~

近年、クレジットカード発行会社では証券会社や保険会社との連携強化が進んでいる。クレジットカード発行会社が保有する個人IDを活用し、銀行と連携して利用拡大を図る取り組みは、これまで主に銀行系のカード会社を中心に進められてきた。証券会社や保険会社との連携強化が進む背景には、カード利用者が提携企業のサービスを利用することでポイント付与率がアップするといった商品設計を通して、金融サービス間の相互送客効果の向上を目的としていることが挙げられる。決済を起点として、銀行、証券、保険の各商品・サービス間において顧客の商品購入・検討時に関連商品を提案するなどクロスセルによる事業強化を図る取り組みが進んでいる。

また、共通ポイントとの連携を強化する取り組みも進んでおり、キャッシュレス決済周辺分野との連携が加速する可能性がある。

3.将来展望

クレジットカード市場規模は拡大基調で推移し、2028年度には約158兆円に達すると予測する。

市場拡大の要因としては、不動産や冠婚葬祭領域など、今までクレジットカードが利用されてこなかった領域での利用拡大や、日常生活における消費全般でのキャッシュレス決済の利用の浸透が期待できる事が挙げられる。クレジットカードの個人IDを軸とした様々なマーケティング施策が展開されており、様々な事業を通して安定した顧客基盤を有するクレジットカード発行会社においては、クレジットカードと紐づいた個人IDを獲得する事が、事業展開を図る上で必要不可欠となる。カード利用者のカードの内、利用頻度が高いメインカードとされるための取り組みや、セカンドカードとされるための取り組みも重要になっていくとみる。

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