黒川虎徹(アルティーリ千葉)、ホームデビューで大観衆沸かせる活躍——レマニスHCも絶賛「ううむ、すごい!」

16得点にゲームハイの5アシストで勝利に貢献
アルティーリ千葉に特別指定選手として加わった黒川虎徹(東海大4年)が、1月31日に千葉ポートアリーナで行われたベルテックス静岡戦でホームデビューを果たした。試合は90-56の快勝。黒川自身も16得点、3リバウンド、5アシスト、1スティールと貢献した。

1月5日にアルティーリ千葉入りが公になった後、黒川は前節1月27日のバンビシャス奈良戦Game1でBリーグデビューを果たし、翌日のGame2で初得点(5得点)、初アシスト(3アシスト)を記録していた。しかしこの日のパフォーマンスは別次元。4,533人の大観衆が集まりクラブカラーのブラックネイビーで染まったアリーナを、スピードに乗ったドライブや3Pショット、相手の正面に立ちはだかる執拗なディフェンスで大いに沸かせた。2桁得点はBリーグ入り後初。アシストはゲームハイだ。3Pショットも初めて成功させている(4本中3本決めて成功率75.0%)。

試合後の会見で、黒川の秀逸なプレーぶりについて聞かれたアンドレ・レマニスHCは、開口一番「ううむ、すごい!(Uumm, he was great!)」と話して笑顔を見せた。黒川はチームに合流して以来練習でもずっと良い内容だったという。しかしデビューからわずか3戦目。合格点というには十分すぎるほどの大活躍を、レマニスHCは以下のように称賛した。

「相手の25番(ジョン・ハーラー)や21番(ケニー・ローソン・ジュニア)が仕掛けるオンボールスクリーンに対峙して、その威力をいなして戦うのは(入りたての)若手にとって難しいものです。経験がないだろうし、学ばなければできません。奈良ではそれを少し味わったかもしれませんが、今日は素晴らしかったですね!」
“Now (Kurokawa) has to deal with #25 (John Harrar), #21 (Kenny Lawson Jr) setting on-ball screen. That’s a man setting screen. And having to navigate physicality of that is sometimes difficult for the young players. It’s new. You need to learn how to do that. I thought maybe on the weekend, he caught a little bit of that. But tonight he was great!”

レマニスHCは黒川のスピードについても言及し、「段違い(Another level)」と表現した。たぶんこの評価は、試合を見た誰もが感じたことではないだろうか。

第1Q残り3分9秒、「虎徹劇場」開演黒川がホームで初めてコートに入ったのは、アルティーリ千葉が20-14とリードした第1Q残り3分9秒だった。ここからクォーター終了までの黒川をプレーバイプレーで振り返ってみよう。

残り2分55秒 スクリーンを使ってトップでボールを受け、ペイントアタックからデレク・パードンのレイアップをアシスト(スコアは22-14)

残り2分31秒 相手の2-3ゾーンディフェンスを見て、トップからBリーグの舞台で初の3Pショット成功(前田怜緒からのアシスト、スコアは25-16)

残り2分8秒 ゾーンディフェンスの隙を突くピンポイント・パスでアレックス・デイビスのレイアップをアシスト(スコアは27-17)

残り24秒 熊谷尚也のスティールからのこぼれ球を拾い、速攻に走った前田のレイアップをアシスト(スコアは31-22)

この時間帯の公式データに現れる黒川の記録は以上だが、会場が沸いた瞬間はこれだけではない。出場から1分もしないうちに、黒川にボールが渡るたび次に何が飛び出すかという期待感でどよめきが起こる「虎徹劇場」が開演。残り7秒には、甘くなった相手のパスに飛びつきスティールになりかけた好プレーもあった。マッチアップ相手に立ちはだかってファイトを見せる堅固なディフェンスは、以降も試合終了まで何度となく会場のボルテージを高めた要素だ。

黒川は第4Qにもスパートして5得点、2アシスト、2リバウンドを記録している。チーム最後の90得点目も黒川のドライビングフローター。この時は東海大の先輩にあたる鶴田美勇士が効果的なスクリーンで助けており、早くもケミストリーの高さを感じさせた(下の写真参照)。

第4Qにチームとして90得点目となるランニングフローターを決める黒川虎徹(写真/©B.LEAGUE)

試合に関して言えば、序盤にチームを勢いづけたのは、最終的にゲームハイの21得点を挙げたブランドン・アシュリーの連続得点だった。アシュリーの先制パンチは相当なダメージだったはずだ。その後黒川の追撃を経てハーフタイム時点でスコアは50-30。以降静岡には、わずかなチャンスをモノにする力が残っていなかったような印象だ。

目指すは日本代表のポイントガード

試合後の会見では、レマニスHCに続いて黒川も質疑に応じた。ホームデビューの総括を黒川は以下のような言葉で表現している。

「試合を通じて本当に全員がゲームプランを遂行していたことが良かったと思うことと、オフェンスにフォーカスするのではなくディフェンスでしっかり自分たちがやるべきことをやろうとしていたことが、結果につながったと思います」

自身のパフォーマンスについては、2つのターンオーバーと終盤やや停滞したオフェンスにおけるプレーメイクを反省材料として挙げた。良い場面がたくさんあった第4Qだが、最後の2分間にチームとして得点できなかったためか課題も感じたようだ。また、奈良戦Game2(11分27秒の出場で3ファウル)の反省を受け、19分4秒のプレータイムを1ファウルでしのげたことには手応えを感じたという。

レマニスHCが話したプロレベルのフィジカリティーについては、「大学と比べてフィジカルの強さ、コンタクトのし方、ずるがしこさがまったく違います」と実感している様子。強みとしているディフェンスについても、「オフボールの手の使い方もプロでは全然違うなと感じています」と様々な学びがあるようだ。「目指しているのは日本代表のポイントガードなので、遠慮なくルーキーらしくやっていくのが大切かなと思っています」というだけに、レベルアップに向けた意欲も非常に旺盛。チームメイトのガード陣(杉本 慶、大崎裕太と前田)の良い部分を取り入れたり、レマニスHCらとのコミュニケーションをより良くするために英語も勉強中とのことだ。

こちらは奈良でのBリーグデビュー2戦目。最大15点差を逆転して78-76で勝利したこの一戦で、黒川はBリーグ初得点と初アシストを記録した(写真/©B.LEAGUE)

東海大で最終学年にキャプテンを務めた黒川は、昨年春先の時点では苦戦続きだったチームを12月のインカレで準優勝に導き、自身も敢闘賞と3P王にも輝いた。小柄ながらチーム一丸となって戦い、一つ一つのポゼッションに高い集中力で臨む東海大の特徴を、そのまま体現するようなプレーヤーだ。この日のプレーにそんな個性を感じた人も多いことだろう。ルーキーらしく思い切りの良いプレーと、対照的にルーキーらしからぬ落ち着きや明晰なバスケットボールIQ。飛躍の準備は整っているように見えた。

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