タイ改革派の前進党、解党迫られる可能性 不敬罪改正の公約に違憲判断

タイの昨年の総選挙で最多得票を獲得した、民主派の最大野党「前進党」が、解散を迫られる可能性が出てきた。同党が掲げる主要政策が1月31日、憲法裁判所によって違法と判断されたためだ。

前進党は昨年の総選挙で、王室に関する不敬罪の改正を求めることを公約に掲げた。選挙でどの政党よりも多くの票を得たが、政権には加わっていない。

憲法裁は今回、この公約が憲法違反に当たると判断。不敬罪の改正は、タイの政治システム全体を転覆させようとする試みだとした。

今回の判決は、直ちに何らかの罰を科すものではない。しかし、前進党を解散させ、同党指導者らの政治活動を数年間禁止するのを正当化するために使われると、広く予想されている。

活動家らは、政治批判を抑え込む目的で不敬罪の関連法が使われることが増えていると主張している。

今回の判決によって、前進党のピタ・リムジャロエンラット党首が政治活動を禁止される可能性も指摘されている。

米ハーヴァード大学で学んだ若いピタ氏は、タイの王室と、軍部とつながりのあるエリート層にとって、大きな脅威とみなされてきた。昨年の総選挙では、それらの影響力を抑えることを公約を掲げ、過半数の票を獲得した。

その後、首相指名を目指したが、選挙で選ばれたのではない議員らで構成する上院によって阻まれた。

ピタ氏は先週、同氏の議員資格の剥奪を狙った別の裁判を切り抜けたばかりだった。

しかし、前進党の主要政策をめぐる、二つ目の重要な裁判では、勝訴することができなかった。

不敬罪で多数が訴追

今回の判決を出したことで、憲法裁は実質的に、公選議員で構成する国会でさえ、不敬罪の関連法には手出しできないのだと示したことになる。

同法については、タイにおける表現の自由を抑圧しており、執行も厳格だとの批判が広くみられる。

1月には、バンコクの男性(30)が王室を批判した罪で、禁錮50年の刑を言い渡された。

2020年11月以降では、260人以上が不敬罪で起訴されている。

2019年の総選挙では、前進党の前身の新未来党が予想外の好成績を収めたが、その後に憲法裁によって解党を命じられた。

これを受け、学生が主導する抗議デモが数カ月続いた。その際、王室改革を求める異例の要求も唱えられた。

抗議デモの指導者らの多くは現在、不敬罪に基づき訴追されている。今後、長期の禁錮刑に処される可能性もある。

憲法裁は過去にも、不敬罪の改正を求めることの合法性について判断を示している。

2021年11月には、前年の抗議デモで王室改革を訴えた主要活動家3人に対し、「立憲君主制を転覆させる隠れた意図」があったとの判決を出した。その後、3人とも複数の罪状で起訴された。

今回の判決は、不敬罪法の改正を示唆することさえ認められないとしている。

前進党は今回の裁判で、法律を精査するのは選挙で選ばれた議会の正当な役割だと主張した。不敬罪の関連法は、これまでに2度、大幅に改正されている。

前進党はまた、選挙運動では不敬罪関連法の完全廃止ではなく改正のみ訴えたと説明。総選挙で最多得票したことは、その訴えが有権者の支持を得ていたことを示しているとした。

しかし憲法裁は、前進党とその指導者らについて、国王を元首とするタイの民主的な政治体制の転覆を求めるに等しい「行動をとった」と裁定した。

また、同党に対し、不敬罪関連法の廃止を求める意見表明を禁止。「合法的な立法措置」以外の方法による同法の改正も禁じた。

これに伴い、国会における同法の改正は可能かもしれないが、同法について公開討論やソーシャルメディアでの議論は許されないということになる。

タイでは、薄弱な根拠で政党が解散させられたり、指導者が政界から追放されたりしてきた。前進党についても、同様の圧力が高まることが考えられる。

(英語記事 Thai reformist party could be dissolved after court loss

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