『きみセカ』に続いて『【推しの子】』も 配信&映画のメディアミックスの難しさ

1月第4週の動員ランキングは、2002年に放送開始されたTVアニメ『機動戦士ガンダム SEED』の最新エピソードを、完全な新作映画として描いた劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が、オープニング3日間で動員63万4000人、興収10億6600万円をあげて初登場1位となった。『機動戦士ガンダム』の劇場版は、新カットや新主題歌を除けば基本的にテレビ版のダイジェストでありながら、その当時社会現象化した1981年から1982年にかけての劇場版『機動戦士ガンダム』3部作に端を発するが、その時代を含めても今作は『ガンダム』シリーズ過去最高の出足。もちろん、初動成績で10億円を超えるのも初めてとなる。

他の初登場作品としては、3位に内田英治監督・原案・脚本による『サイレントラブ』。オープニング3日間の成績は動員が15万5000人、興収が2億1200万円。6位に菅原伸太郎監督の『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』。オープニング3日間の成績は動員が9万8000人、興収が1億3400万円。9位にヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』。先行上映を含むオープニング3日間の成績は動員が6万9200人、興収が1億円。

3月10日(現地時間)に授賞式が迫っているアカデミー賞でも有力候補の一角を占めているディズニー配給の『哀れなるものたち』は、観客からの評判も高く、TVタレントを使用したスポットを打つなど精力的な宣伝もおこなわれているが、現在の日本における外国映画興行の難しさを露呈することに。アカデミー賞の本番まで上映スクリーンを維持できるといいのだが。

しかし、今後上がり目がないという点でよりシリアスなのは、東宝配給の全国拡大公開作品にもかかわらず初動で動員10万人を割ってしまったゾンビアクション作品『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』だろう。本作は、日本テレビとHuluによる共同制作のドラマとして2021年1月期に地上波でシーズン1が放送、シーズン2、シーズン3、シーズン4はHuluで配信、それと並行して地上波では「特別編」や完全新作の「入門編」などが放送されてきたシリーズの完結編となる作品だ。

こうした、地上波放送時の人気を受けての劇場版ではなく、当初から最終エピソードを映画化する計画が組み込まれての劇場版は、それこそフジテレビが松竹と組んだ『パ★テ★オ』(1992年)の時代から民放各局が試みてきて、これまでどの作品でも苦戦をしてきた企画だ。まして、今回は劇場版までのすべての流れを追うには、配信プラットフォームであるHuluで配信されたシリーズも押さえておかなくてはいけない。Huluの契約者を増やすためのプロモーションという意図はわかるのだが、劇場映画としてどこまで勝算があったのかについては疑問が残る。

ちなみに、先日実写化が発表となった『【推しの子】』も、同じように配信プラットフォームであるAmazonのPrime Videoと東映が組んで、テレビシリーズの配信と劇場版の公開が予定されている企画だ。果たして、過去の前例を覆すような成功例となることができるだろうか?

(文=宇野維正)

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