「ゲームの世界から飛び出してきたみたい」藝大生の“生きる彫刻”が大反響。「体力の続く限りは生きた姿をお見せしたい」と作者【画像集】

銀色の髪の毛、褐色の肌にとんがった耳の少女が、巨大な爪がついた動物の毛皮を身につけています。
ファンタジーの世界に出てくるキャラクターの等身大フィギュアかと思いきや、ゆったりとポーズを取って動き出しました。
東京都美術館 でのユニークな展示がSNSで話題になっています。

チワ族さんが実演する動く彫刻「貌」(2024年1月30日、撮影:安藤健二/BuzzFeed Japan)

作者が自ら着ぐるみに入る「生きる彫刻」に注目集まる

1月28日から2月2日まで開かれている東京藝術大学の卒業・修了作品展 の「貌(ぼう)」という作品です。
着ぐるみを製作した同大学彫刻科4年生の「チワ族」( @Chihua_Zoku )さんが、自ら中に入り、実演するという内容になっています。

チワ族さんが実演する動く彫刻「貌」(2024年1月30日、撮影:安藤健二/BuzzFeed Japan)

X(旧Twitter)では以下のような反響を呼んでいます。
💬「まさに生きる彫刻…というか生命でした」
💬「ゲームの世界から飛び出してきたのか思うくらい」
💬「『この仕草を含めて作品だ』と言わんばかりのクリエイター根性を感じる」
1月30日に現地を訪れたところ、圧巻の存在感に地下ギャラリーでの展示には、常に人だかりができており、多くの人が写真を撮っていました。(※東京藝大によると動画撮影はNGでした)
あとで作者のチワ族さんに取材したところ、着ぐるみは約10kgもありますが、「体力的には問題ありません」とのこと。
展示2日目までは通しで演技していたそうですが、「教授から心配とお叱りをいただいたので、展示3日目からは1時間に1度休憩を挟んでいます」と報告しました。「体力の続く限りは生きた姿をお見せしたい」と意気込みを語っていました。

チワ族さんが実演する動く彫刻「貌」(2024年1月30日、撮影:安藤健二/BuzzFeed Japan)
チワ族さんが実演する動く彫刻「貌」(2024年1月30日、撮影:安藤健二/BuzzFeed Japan)
チワ族さんが実演する動く彫刻「貌」(2024年1月30日、撮影:安藤健二/BuzzFeed Japan)
チワ族さんが実演する動く彫刻「貌」(2024年1月30日、撮影:安藤健二/BuzzFeed Japan)

「身を守る鎧や仮面として他者の姿をまとうことがこの作品のテーマ」と作者のチワ族さん

BuzzFeed Japanではチワ族さんに、この作品を作った経緯について話を聞きました。以下は一問一答です。
――今回の着ぐるみは「ハクア」のフルスーツver.ということですが、どういった経緯から制作されたものでしょうか?
着ぐるみの両肩をはだけさせた姿は、所属しているfurryのサークルのマスコットキャラクターの案を考えた時に発想しました。残念ながらそのキャラクターは採用されませんでしたが、アイデアを気に入っていたので持ち帰り、 卒業制作で作る作品として、種族や雰囲気、テーマを新たに設定し再構成しました。
「ハクア」は竜人の女性で、灰色の獣のはらわたを裂いて、その皮を着ています。裸のまま猛獣の毛皮に脚を通した姿をしていて、着ぐるみによる身体の拡張と、外見と内面の人物像の表現、身を守る鎧や仮面として他者の姿をまとうことがこの作品のテーマです。
1月初めにあったJMoFというfurryのイベントで、ヘッドとタイツに私服を着たハーフスーツver.を出していたため、卒展で出した完全体の姿をフルスーツver.と呼んでいます。
――制作期間はどれくらいかかりましたか?
実制作期間は約半年です。原案となったイラストを昨年の2月に描いていて、昨年4月からヘッドの原型制作に入りました。前期の終わりから夏休みにかけて、ハクアのヘッドの構造の試作として別のキャラクターを制作しています。顔を重要視していたので、ヘッドの制作に最も時間をかけています。
――実際に中に入って「動く彫刻」として展示しようと思ったきっかけはなんですか?
着ぐるみを展示するうえで、動いている姿を見せることは私にとっての必須条件でした。着ぐるみは中に人が入って、動いてこそが本来の姿だと思います。生き物と対峙した時の未知の感情やときめきを伝えたいです。体力の続く限りは生きた姿をお見せしたいと思います。
――会期中は1日に何時間くらい実演されていますか?また今後の実演予定はどうなっているでしょうか。
パフォーマンスは9:30〜17:30の開館時間の約8時間です。1日目と2日目は通しでやっていましたが、教授から心配とお叱りをいただいたので、展示3日目からは1時間に1度休憩を挟んでいます。
――重さは何kgくらいでしょう
合計約10kgです。片足が約2.5kgずつで、あとはボディの重さです。すり足で移動していることと、約2mある尻尾の大半が接地しているので、さほど重いとは感じません。
――何時間も実演しているとなると、体力的に厳しくないか心配になったのですが大丈夫でしょうか?
体力的には問題ありません。山岳部で重いものを背負って長時間歩くトレーニングをしていたので、そこで培った体力と体幹が活きていると思います。酸欠と脱水がよく心配されますが、ゆっくり動くことで深い呼吸を一定に保つことと、パフォーマンス直前と終了後に水分を沢山摂ることで対応しています。汗をかくのでパフォーマンス中にトイレに行きたくなることはありません。
――振り付けで参考にしたものはありましたか?
動きの参考にしたものに関してはは全くの素人で恐れ入りますが、歩き方は能のすり足を、謎の踊りの振り付けは「祈り」や「儀式」のイメージです。しなやかさと力強い流れを意識して動いています。
――SNS上では漫画『メイドインアビス』のナナチやファプタを連想したという声もありましたが……
その意図は全くありません。
――何か影響の受けた作品・キャラクターはありますか?
私が大きく影響を受けた作品は、はつが竜穂さんの自主制作アニメ「 纏の国のガルダ 」です。中学のときに出会った作品で、登場人物たちの心が通いあうかのような舞のシーンが印象的でした。この作品に出会って以来、民族的な力強さと静謐さを備えた雰囲気と、濃い色の肌と薄い色の髪の組み合わせを好んで描いています。
――これまでもチワ族様の作品は、擬人化された動物たちが多く見受けられますが、どんなところに魅力を感じますか?
見た目の自由度が高いところです。人体そのものに魅力を感じているので、オリジナルキャラクターたちの身体は、人間の骨格や筋肉をベースに構成することが多いです。

【訂正】当初、会場を東京都博物館としていましたが正確には東京都美術館でした。(2024/02/01 18:13)

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