駅ビルに入る百貨店が迎えた最後の日 電車で通勤を続けた92歳の女性販売員「こんな幸せな人生はなかった」 

東海地方のデパートが、また1つ姿を消します。

愛知県一宮市の名鉄百貨店一宮店は1月31日が最後の営業です。

威勢のいい掛け声が飛び交う食品売り場に、喫茶店から聞こえてくる井戸端会議の声、この光景も31日で最後です。

(常連客)
「寂しい。このまま続けてほしい」
「寂しい気持ちがありますよね。長年お付き合いしてきましたから。駅の中ですから親しみがある」

名鉄一宮駅の駅ビルに入る「名鉄百貨店一宮店」。

地元で長年愛されてきた市内唯一のデパートが、きょう(31日)は23年あまりの歴史に幕を下ろす日です。

店長の藤本雅也さんは地元・一宮市の出身です。

営業最終日は自ら接客し、売り場案内を担当。

(名鉄百貨店 一宮店 藤本雅也店長)
「回るお菓子も愛知県では唯一ですが、きれいになくなってしまった。寂しい思いがしますけど…」

名鉄百貨店一宮店が産声を上げたのは、2000年の11月。

主婦層をターゲットに、初年度は売り上げ目標100億円を掲げ、3年後には112億円を達成。

一時は120以上の店舗が入り一宮の台所として市民に親しまれてきましたが、ネット通販の普及にコロナが追い打ちとなり、昨年度の売上はピーク時の半分ほどに。

ビルの老朽化もあり、閉店を余儀なくされました。

(元販売員 稲葉絵理香さん)
「宝物ですね。10代から働いていたので一緒に成長した。街の人とも仲良くなって、今もつながっている」

92歳の販売員「こんな幸せな人生はなかった」

デパート5階にある「カメラのモリグチ」。

開業当初から、ここで営業を続けてきました。

(カメラのモリグチ 森口達喜代表)
「そりゃ悲しいですよ。続けられるものなら続けてほしい。(Q:一番の思い出は?)そういうのは…今夜、寝る時に思い出すと思う。まだ思い出す暇もない」

そして午後4時すぎ、このお客さんが最後になります。

(最後の客)
「20年間、写真はここしかやっていない。写真は間違いない」

開業当初から働く人は他にも。

(ハンドバッグ販売員)
「私は92歳なんですけど。人生の仕事の最後が、ここだったから。こんな幸せな人生はなかったと思う」

なんと御年92歳のハンドバッグ販売員の女性。

名古屋から名鉄電車で通っていたそうですが、きょうで最後です。

(ハンドバッグ販売員)
「働きやすかった。いろんなデパートありますけど、お客さんの人柄がいい」

デパートの住所は、一宮市新生(しんせい)1丁目1番1号。

藤本店長は、文字通り一宮の「一丁目一番地」として地域に貢献できたと胸を張ります。

(名鉄百貨店 一宮店 藤本雅也店長)
「“ありがとう”をたくさん頂いてますし。店頭スタッフも多くのお客様から“ありがとう”を頂いていて大変ありがたい」

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