流産の原因で最も多いのは…?早期流産は偶発的なもの、自分を責めないで【産科医】

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妊娠初期は「流産が不安でたまらない」という人もいるでしょう。でも、正しい知識があれば、その不安も軽くなります。不育症にも詳しい山王病院/国際医療福祉大学の藤井知行先生に、流産と切迫流産(せっぱくりゅうざん)についてうかがいました。

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流産の最も多い原因は受精卵の異常です

流産は妊婦さんの7~10人に1人の割合で起こるもので、決してめずらしいことではありません。妊娠12週未満の流産を「早期流産」、12週0日~21週6日の流産を「後期流産」といいますが、流産の9割以上を占める早期流産の原因は、ほとんど胎児側にあります。ママが何かをしたから・何かをしなかったから、流産になるということではないのです。

早期流産は偶発的なもので、残念ながらそれを食い止める方法はありません。万一、流産を経験したとしても、ママは決して自分を責める必要はないのです。

流産になる胎児側の原因とは?

流産の原因で最も多いのが、受精卵の染色体異常によるもの。精子と卵子のどちらかに、たまたま異常があった場合、育つことができない受精卵が発生します。

とくに卵子の異常は加齢によって増える傾向があるため、女性の妊娠年齢が高くなればなるほど、流産の確率は高くなります。また、ごくまれに、正常な精子と卵子が受精しても、その後の過程で受精卵に異常が生じることもあります。

流産になるママ側の原因とは?

子宮に子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)や子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)などの病気があったり、中隔子宮(ちゅうかくしきゅう)などの形態異常があったりすると、流産に至る原因になることも。子宮筋腫の場合は、筋腫が子宮の内側にあって子宮内腔が変形するような状態だと、流産を招く場合もあります。

また、赤ちゃんを包む卵膜(らんまく)が細菌に感染して発症する絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)が原因で、流産になることもあります。ほかにも、妊娠初期に風疹(ふうしん)やサイトメガロウイルスなどの一部のウイルスに感染した場合、流産の原因になったり、赤ちゃんの発育に影響することがあります。

「9週の壁」ってなに?

妊娠9週前後に流産と診断されることが比較的多いため、「9週の壁」を気にする妊婦さんもいるようです。妊娠9週といえば、胎盤形成の過程で、胎盤内に母体の血液が一気に流れ込む時期。この過程がうまくいかないと、胎児が育たなくなることがあります。また、胎児心拍は妊娠8週以降は確実に確認できるはずなので、この時期まで待っても確認できないと、流産と診断されます。

流産と切迫流産は、まったく違うもの

流産と切迫流産も、自覚できる症状は、「出血」と「腹痛(おなかの張り・痛み)」で、同じです。しかし、ママの体の中で起きている問題はまったく違います。

いちばん大きな違いは、赤ちゃんが生きているかどうか、ということです。
流産は赤ちゃんが死亡していて、超音波検査でも胎児心拍が確認できない状態をさします。ママに自覚症状がなくても、起こっている場合もあります。

一方の切迫流産は、出血や腹痛などの自覚症状はあっても、超音波検査で胎児心拍が確認でき、妊娠は継続している状態です。

切迫流産の原因はなに?

切迫流産も、妊娠12週未満を「早期切迫流産」、それ以降を「後期切迫流産」と分けます。早期切迫流産の場合は、原因が特定できず、妊娠経過に影響がないケースが大半。赤ちゃんが元気で子宮頸管の長さが十分であれば、安静に過ごすうちに症状が治まることが多いでしょう。一方、後期切迫流産は、子宮の異常や感染症などが主な原因です。

切迫流産と診断されたらどうする?

切迫流産と診断されたら、安静にすることが大切です。自宅安静の指示が出たら、基本的に外出はせず、ラクな姿勢でゆったり過ごしましょう。「簡単な家事ならOK」「入浴は避ける」など、安静の度合いは症状によって変わるので、医師に確認を。

ただし、一時的な出血がある場合は、できるだけ横になって休みましょう。また、切迫流産の原因が感染症など明確な場合は、安静にするだけでなく、病状に応じた治療を行います。

監修/藤井知行先生 文/栗本和佳子

2年の不妊治療を経て双子を出産したモデル・武智志穂。稽留流産を経験し不安も…。「妊娠が判明したときは喜び7割、不安3割」

「流産」は一定の確率で起こるものですが、大半は、たまたま受精卵に異常があったことが原因で、だれの責任でもありません。心配しすぎず、なるべくリラックスして過ごしましょう。

参考/『初めてのたまごクラブ』2024年冬号「正しく知っておこう 流産と切迫流産」

●記事の内容は2023年11月の情報で、現在と異なる場合があります。

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