イラクには礼を言わなければならない。バーレーン戦で一皮むけた森保ジャパン。見事な学びと実践だった【アジア杯】

[アジアカップ ラウンド16]日本 3-1 バーレーン/1月31日/アル・トゥママ・スタジアム

日本代表は1月31日、アジアカップのラウンド16でバーレーンと対戦し、3-1で快勝。堂安律、久保建英、上田綺世がゴールを挙げた。

試合は久保の珍しいキックオフ失敗から、落ち着きのない立ち上がりになったが、徐々に日本がポゼッションを握って支配力を強めた。

堂安の先制ゴール、久保の追加点、オウンゴールで1点を返されつつも上田が3点目を奪い、点差を広げてフィニッシュ。個々にミスが目立ち、より多くの得点を奪えた感は残るものの、試合運び自体は危なげなかった。

バーレーンは[4-3-3]の基本布陣だが、守備時は両ウイングが中盤に並び、[4-1-4-1]のブロックで待ち構える形だった。センターバックの冨安健洋や板倉滉に対するプレスはほぼなく、中盤に入ってきたところを仕留める守備だ。

対する日本は、久保を右インサイドハーフ、旗手怜央を左インサイドハーフに並べ、遠藤航がアンカーとなる[4-3-3]で攻撃の立ち位置をとった。中盤は互いに逆三角形でかみ合わなかったが、バーレーンのアンカーである6番、モハメド・アル・ハルダンは久保をマンマークしたため、旗手が空きやすい状況だった。

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必然、日本の効果的な攻撃は左サイドが多くなる。最前線で上田綺世が背後をうかがう限り、バーレーンのセンターバック2人は前へ出られない。すると、ライン間のすき間へ旗手が潜り、フリーに。大外では中村敬斗が幅を取っているため、バーレーンのSBモハメド・アデルは旗手にも中村にも寄せられず、ステイした。

そこへ日本は、中山雄太や冨安も絡んでいく。左サイドでは旗手、中村、中山、冨安が、相手SB、インサイドハーフ、ウイングに3対3や4対3を作り、深く押し込んだ。

先制点もこの流れから生まれている。31分、左サイドから冨安がボールを運び、中村が外に張って中山と旗手がライン間へ潜ると、バーレーンの守備はグチャグチャに乱れ、中村から中央の遠藤へボールを返すと、中盤は大きく空いていた。

遠藤は唯一残っていた相手MFに寄せられたが、その横へ素早くサポートしたのが、毎熊晟矢だ。フリーでボールを受けて前へ進むと、右足を一閃。激しくゴールポストを叩いたボールを、堂安が鋭い嗅覚でかぎつけ、押し込んだ。

バーレーンもサイドで3対3までは、うまく対応していたと思う。中村のカットインと右足のシュートは相手に最大限の警戒をされており、誘い込まれるように攻撃が詰まった。こう着を破ったのは4人目、冨安だ。彼がうまく中盤を引き付けてパスを出すことで、局面は4対3になり、大きくバーレーンの守備を崩すことにつながった。

バーレーンがあまりアグレッシブにプレスをかけず、自陣に構えたのは、ポゼッションや集団的なロングカウンターに自信を持っていたからだろう。確かに、どちらも厄介だった。

特に3人、4人と湧き出してくるロングカウンターはグループステージでも対戦相手を苦しめており、日本も崩されかけた瞬間はあったが、起点となるFWアブドゥラ・ユスフを冨安が完璧に潰したことで、ほとんど機能させなかった。

大柄で重い相手に、体重を預けさせず、斜めから対応して足を伸ばしたり、前でカットしたり、斜め後ろに置いてオフサイドにしたりと、出色のパフォーマンスだった。遠藤も普段よりあまり前へ刈りにいかず、リバプールでプレーするアンカーのようにDFとの連係を強め、スペースをカバーした。

グループステージで日本を下したイラクには礼を言わなければならない。やはり一度失敗すると違う。森保ジャパン、見事な学びと実践だった。

準々決勝は2日空けて2月3日、強豪イランとの対戦になる。いよいよ、ここが正念場だ。各組のトップランク同士の対戦が始まるのが、この準々決勝でもあり、カタール・ワールドカップでも、ここから一気に試合のレベルが上がったことが記憶に新しい。

好プレーを見せていた旗手の怪我は残念だが、日本は良い流れできている。5年前に敗れた0-3のリベンジを期すイランを、返り討ちにしたい。

取材・文●清水英斗(サッカーライター)

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