英中銀、金利据え置きも判断分かれる 総裁「インフレ見極め必要」

Andy Bruce David Milliken Suban Abdulla

[ロンドン 1日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は1日、政策金利を約16年ぶりの高水準である5.25%に据え置いた。金融政策委員会9人のうち6人が据え置きに賛成、ハスケル委員とマン委員は0.25%ポイントの利上げを、ディングラ委員は同規模の利下げに票を投じた。

委員が利上げと利下げを同じ会合で求めたのは、世界金融危機の初期だった2008年8月以降で初めて。

ベイリー総裁は、インフレは「正しい方向に進んでいる」としながらも、中銀は慎重な姿勢を維持しており、インフレ率が目標の2%に向けて低下しても「仕事が終わった」わけではないと強調。「インフレが目標の2%まで低下し、その水準にとどまるという証拠を利下げ前に見極める必要がある」と述べた。

また、勝利を宣言するには時期尚早で、インフレ率が再び上昇する可能性があるとしながらも、考え方に変化があったとし「私にとって重要な質問は『どの程度の制約が必要なのか』から『いつまでこのポジションを維持する必要があるのか』に移行した」と述べた。

CNBCとのインタビューでは、利下げの回数や時期について「見解を示すつもりはない」とした上で、「市場が織り込んでいる見方は私が反対するものではない」と語った。

今回の会合に先立ち、ロイター調査では、委員の1人が利上げ、残りは金利据え置きを支持すると予想されていた。

英中銀はインフレ圧力がさらに強まれば「一段の引き締め」が必要になるとの文言を取り下げた一方、「政策金利を現在の水準にどの程度維持すべきか検討する」とした。

また、今後数カ月のインフレ見通しを引き下げたが、「十分長期に制約的」な政策を続ける必要があると改めて表明した。しかし、賃金の伸びはかなり高く、長期的なインフレ圧力は他国とは異なるとした。

消費者物価の年間上昇率は、第2・四半期に一時的に2%に戻る可能性があるとし、近い将来の見通しを11月から大幅に引き下げた。

しかし、11月時点から大幅に低下した金利見通しに基づく中期見通しでは、インフレ率は今年第3四半期に再び2%を上回り、目標水準に戻るのは2026年後半と11月予想から1年後ずれさせた。

成長率見通しは小幅上方修正したが、今後数四半期で十分な経済成長を生み出すのは難しいとの見方を維持した。

11月に発表された減税策の影響については、今後数年間は英国経済を小幅押し上げると指摘。しかし、税とインフレを考慮した家計所得の伸びは低水準にとどまるとの見通しを、ほぼ維持した。

デロイトのチーフエコノミスト、イアン・スチュワート氏は「議論のバランスはゆっくりと利下げに傾いているが、中銀は利下げした後にインフレが回復し、再び利上げしなければならないリスクを冒すことはできない」と述べた。

セント・ジェームズ・プレイスの経済調査責任者、ヘタール・メータ氏は、英中銀は英国の潜在的なインフレ圧力をなお懸念しているとし、「われわれは依然として英中銀が利下げを巡り欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備理事会(FRB)に遅れを取っている可能性が高いと考えている」とした。

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