近畿整備局、奈良県ら/大和川流域、実効性ある水害対策推進

国や奈良県、同県内の25市町村などで構成する大和川流域水害対策協議会(座長・見坂茂範近畿地方整備局長)の第5回会合が1月31日、奈良市内で開かれ=写真、2022年5月に策定した流域水害対策計画に基づく取り組み状況を報告するとともに、貯留機能保全区域などの指定に向け、流域全体で推進することを確認した。
同協議会は、奈良県内の大和川流域が全国初の特定都市河川に指定されたことを受けて設置。下水道の整備やため池の治水利用、水田貯留、雨水貯留施設の設置などによって氾濫を防いだり、減らしたりする対策に加え、貯留機能保全区域の指定などによる被害対象を減少するための対策を協議している。
冒頭のあいさつで、見坂局長は「全国から大和川流域の取り組みが注目されている。防災・減災、国土強靱化のため、水をためる施策を取り入れながら流域治水を実施していきたい」と述べ、土地利用規制などのソフト対策も組み合わせて取り組むことが重要だと強調した。
山下真知事は「地球温暖化による気候変動の影響が出ている。上流域で水をため、時間を稼ぐ取り組みが重要になる」と市町村に協力を求めた。
続いて、近畿整備局大和川河川事務所と県が流域で進めている河川事業や雨水貯留浸透施設の整備状況などを報告。併せて貯留機能保全区域と浸水被害防止区域の指定の進め方や今後のロードマップを説明した。
貯留機能保全区域では低地やくぼ地などの遊水機能を保全し、浸水被害防止区域は浸水深50センチ以上の水害リスクを踏まえ、最低限の開発規制や建築制限を措置する。基準に基づき指定候補地を抽出し、土地所有者の合意などを経て区域指定を目指す。大和郡山市や川西町などで先行して検討し、街づくりの方向性や地元情勢などを踏まえ指定する区域を選定。土地所有者の同意を得られる区域から順次指定を進める。
浸水被害防止区域は川西町と田原本町で先行して検討する。街づくりの方向性やハード対策、立地適正化計画の作成など、地域の実情を考慮した指定の考え方を整理した上で、指定を進める。
山下知事は「貯留対策は時間やお金が掛かり、対策を講じている間に被害が生じることもある。土地利用規制は短い期間で指定ができるが、地権者の同意や地域の合意形成が必要になる。各市町村の理解と協力が不可欠になる」と協力を求めた。
見坂局長は「特定都市河川浸水被害対策法に基づく土地利用対策は引き続き流域全体で推進することを確認できた。今後も連携を強化し、実効性のある流域対策を推進していきたい」と述べた。

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