不本意なドラマ化で「いいひと。」連載終了の高橋しん氏「不幸」は痛みを共有できない制作陣の存在

「いいひと。」「最終兵器彼女」などで知られる漫画家・高橋しん氏が1日、自身のXで作品の他メディア化についての思いを明かした。「私の読者の皆様へ ご心配されてる方もいらっしゃるかもしれませんので、現在思うことを。」と切り出し、1月29日に訃報が伝えられた漫画家・芦原妃名子さんを指すとみられる「先生」や作品についてつづった。

芦原さんは1月26日にSNSで、自身の作品が原作の日本テレビ系ドラマ「セクシー田中さん」が、思いとは違う方向に「改変」されることに苦慮していたと明かしていた。この時点で高橋氏は「僭越ですがもしご縁があれば、私のような小さな作家でも何かお話くらいはお聴きできるかもしれない」と考えていたという。
高橋氏の「いいひと。」も1997年に俳優・草彅剛主演でドラマ化されたが、第1話を見て、主人公を「変え『られて』」いたと感じた。「読者の方々の中の『いいひと。』を守ること」と「多くの読者の方に悲しい思いをさせてしまった、その漫画家としての責任として私の生活の収入源を止めること、その二つを考え連載を終了させようと思いました。」と決断した過去があった。

芦原さんと類似する状況を経験していただけに、力になれると考えていたが、高橋氏が芦原さんと話すことはかなわなかった。Xでは「先生が今解放されて安らかでいらっしゃることを願います。お疲れ様でした。」とねぎらった。

続けて高橋氏は、作家や作品を守るための「仕組みの共有」を提案。法的な仕組みや「トラブルになってからの仕組み」の必要性を説いた。また「作家と他のメディアは本来対立する立場ではない」とし、「信頼を担保できる、前を向ける仕組みも大事」と信頼関係の構築を望んだ。

さらに最後に
不幸なのは
作品が変えられることではなく
作品が失敗することではなく
作品が
作家の痛みを自分たちの痛みとして感じられない人に委ねられる
そう感じさせてしまう事です。
と指摘。0から1を創り出すために身を削るような思いをしている作家に対して、思いを共有せずに作品の知名度や設定だけを拝借して安易にメディア化しようとするような制作スタッフの存在を「不幸」と表現した。

(よろず~ニュース編集部)

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