焦点:米3月利下げ観測、FOMC受け後退 市場圧迫も

Davide Barbuscia Lewis Krauskopf

[1日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は31日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で3月の利下げの可能性は低いとの認識を示した。早期利下げを期待していた投資家は、FRBがインフレ抑制を重視していることを改めて思い知らされた形となった。

一部の市場関係者は、利下げ開始のタイミングより、消費者物価の鈍化傾向や着実な経済成長の方が重要だとし、利下げ開始が遅れても大きな影響はないと予想。市場は依然として年内の約140ベーシスポイント(bp)利下げを織り込んでいる。FRBの予想は75bpだ。

だが、今回のパウエル議長の発言に加え、米銀行部門の問題再燃やハイテク大手の強弱まちまちな決算を受けて、S&P総合500種指数の騰勢が鈍り、債券相場も伸び悩むのではないかとの見方も浮上している。

BMOウェルス・マネジメントのユンユ・マー最高投資責任者は「市場はおそらく、昨年末から今年初めにかけての上昇を一部消化する必要に迫られる。経済情勢と企業業績が市場に織り込まれた水準に追いつくまで待つ必要がある」と述べた。

31日のS&P総合500種指数は1.5%下落。マイクロソフトやグーグルの親会社アルファベットの決算が予想を下回ったことに加え、地銀株が売られた。10年国債利回りは約13bp低下した。

一部の投資家は、利下げ観測を背景とする昨年末以降の株価・債券の上昇が行き過ぎだったのではないかとみている。FRB高官はここ数週間、早期利下げ観測をけん制。景気は引き続き底堅く、過度に早期の利下げはインフレの再燃につながりかねないとの懸念が出ている。

ウィルシャーのジョシュ・エマニュエル最高投資責任者は「市場は先走っていた。市場が期待していたほどFRBがハト派的でなかったことは驚きではない」と述べた。

31日終盤のフェデラルファンド(FF)金利先物市場は、3月利下げ開始の確率を36%と予想。パウエル議長の会見前は58%だった。5月利下げの確率は51%から60%近くに上昇した。

クリアブリッジ・インベストメンツの投資戦略アナリスト、ジョシュ・ジャムナー氏は、3月の利下げを予想していた多くの投資家は「オフサイドポジションにいたことになる」とした上で「最初の利下げが3月でも5月でも、米経済がどのように軟着陸するか、もしくは景気後退に陥るかにとって重要ではない」と述べた。

<経済情勢を注視>

実際、パウエル議長は米経済が好調との認識を示し、経済成長は堅調で労働市場も力強く、インフレが鈍化していると指摘した。

コニング・ノース・アメリカのシンディ・ボーリュー最高投資責任者は「3月までに入手できる経済指標が、相場を左右するという意味で極めて重要になる」と指摘。

「インフレ率と賃金の伸びが鈍化し、FRBが過去6カ月間に確認した傾向と矛盾しなければ、5月のFOMCの重要性が大幅に高まり、FRBが5月に動くという見方が強まるだろう」と述べた。

モナチル・キャピタル・パートナーズの創設者であるアリ・メリ最高投資責任者は、FRBがインフレを警戒していることに安心したとし、「今回のFOMCのポイントは2%のインフレ目標へのコミットメントだ。FRBは2%に非常にコミットしており、それは正しい。(最初の利下げのタイミングは)それほど重要ではない」との認識を示した。

一部の債券投資家は、FRBの利下げ転換が遅れれば、利下げ前に高利回り債に投資する良い機会になると指摘する。

チルトン・トラストのティモシー・ホーラン債券部門最高投資責任者氏は、利回りがさらに上昇すれば債券投資を拡大するとし、「パウエル議長はFRBに時間を与えたが、投資家にもチャンスを与えた。投資家は非常にタイトな金融政策からの調整というこの極めて重大なシフトをさらに有効活用できる」と述べた。

一方、金融環境の引き締まりで金融の安定が脅かされれば、FRBが早めに利下げに動く可能性も指摘されている。

31日の米株式市場では、ニューヨーク州を地盤とする銀行持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の予想外の赤字決算と減配を受け、地銀の健全性を巡る懸念が再燃した。

ウィルシャーのエマニュエル氏は「システムへの金融ストレスが変数だ。変数次第で天秤が少し傾く可能性があるだろう」と指摘した。

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