空芯菜(2月2日)

 茎が空洞になっているのが名前の由来という。空芯菜[くうしんさい]は、東南アジアなどの熱帯地域でよく食べられている。パイプのような構造は、水を吸いやすくするためとされる。シャキシャキとした食感と癖のない味が特徴で、炒め物やおひたしにぴったりだ▼玉川村の農家数軒のハウスで育つ。村民が1996(平成8)年、村と友好都市を結ぶ台湾・鹿谷郷[しかたにごう]から種を持ち帰り、栽培されるようになった。年間2トン近く出荷され、4月ごろから市場に出回る。「道の駅たまかわ」は粉末を使った乾麺や豆菓子、煎餅など、独自の加工品を通年で販売している。血糖値を下げる効果があるとされ、今や人気商品だ▼きょう2日、福島空港発の定期チャーター便で村民30人ほどの訪問団が鹿谷郷へ向かう。コロナ禍を経て、実に5年ぶりに交流が再開する。現地の農業施設を視察して懇親会を催す。杯を交わして末永い友情を改めて誓い合う▼空芯菜は村の生業[なりわい]を支える作物に育ち、特産品として全国に知られるようになった。鹿谷郷と協定を結んで36年。人の交わりや物の往来、思いやりが、紡いだ絆を太くする。心の養分は、海を越えてパイプを流れ続ける。これからも、ずっと。<2024.2・2>

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