『ブギウギ』実話通りではあまりに残酷だから…「生まれて死んで」の展開に スズ子が愛助の死を知る瞬間、史実からアレンジした理由

愛助(水上恒司)を失ったスズ子(趣里)は自暴自棄になるが、山下(近藤芳正)の言葉に我に返る (C)NHK

『ブギウギ』(NHK総合)が第18週「あんたと一緒に生きるで」、本日2月2日放送の86話で、娘・愛子を出産したスズ子(趣里)は羽鳥(草彅剛)一家からの心温まる見舞いを受け、幸せなひとときから一転、山下(近藤芳正)から愛助(水上恒司)の死を報された。空っぽになってしまったスズ子は「ワテも死にたい」とまで口走ってしまう。しかし愛助の遺した手紙から、スズ子と我が子に対する彼の深い愛を改めて知るのだった。

山下から「あんたはボンのぶんまで生きなあかんのです」と諭され、山下、坂口(黒田有)、矢崎(三浦誠己)、そしてトミ(小雪)だって同じぐらいに悲しいのだと悟り、スズ子は我に返って「お母ちゃんな、あんたと一緒に生きるで」と決意する。

スタッフ間で議論を重ねたスズ子への告知のタイミング 「生まれて死んで」が『ブギウギ』らしい

ところで、ここで気になるのが笠置シヅ子さんの史実とドラマとの違いだ。『ブギウギ』ではスズ子の出産とほぼ同時に愛助が亡くなり、それから数日経って山下からスズ子に愛助の死が報される。しかし笠置シヅ子さんの史実では、出産前に笠置さんの婚約者は亡くなり、その翌日には逝去の事実が笠置さんに告げられている。笠置さんは愛する人を亡くした悲しみのどん底のなか、たった独りでお産を迎えた。この史実から、「死と告知」のタイミングをアレンジした意図を、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

「スズ子が愛助の死をいつ知るのか。この局面は本当に難しかったですし、18週の台本作りについては、脚本の足立紳さんも交えてスタッフ間で何度も議論を重ねました。足立さんのなかでは、とにかくスズ子には無事に元気な子を産んでほしいという思いがあったようでした。子どもが生まれる前に愛助の死を告げるのは、あまりにも残酷だと。愛助の死を伝えるのは産んだ後にしたい、ということを強くおっしゃっていました。子どもの誕生とほぼ同時に愛助が亡くなるというタイミングについても、スタッフ間でずいぶんと話し合いました。足立さんのなかでやはり『生まれて死んで』というのが『ブギウギ』らしいし、しっくりくるのではないかという強い思いがあり、この流れに決まりました」

スズ子は愛娘・愛子と、そして愛助の思いと一緒に生きる覚悟を決めた (C)NHK

スズ子と愛助がお互いを感じる姿描く……デリケートな演出と編集の作業

85話の、分娩室でいきむスズ子と、最期の力をふり絞って鈴子への手紙を書く愛助のカットバック(シーンを交互に繋いだ演出)も印象的だった。この演出について福岡さんは、

「なんともドラマチックな展開ですよね。ともすれば『ドラマの仕立て』が匂って、観ていただく方が冷めてしまうのではないかという懸念も、もちろんありました。しかし趣里さんと水上さんの、スズ子と愛助としての自然な演技のおかげもありまして、見応えのあるシーンに仕上がったのではないかと思っております。スズ子と愛助のシーンのカットバックについてはバランスがとても難しく、どちらに寄りすぎてもいけないし、会いたくても会えないなかで、お互いをしっかり感じさせるように見せるのはとても難しく、デリケートな演出と編集の作業だったと思います。86話の『スズ子が見た夢』というラストシーンも含めて、『あんた(生まれたばかりの愛子と愛助)と一緒に生きるで』というスズ子の思いが伝われば、と願っております」

と語った。次週19週の週タイトルはいよいよ「東京ブギウギ」。スズ子がこの悲しみから立ち上がり、生きて、歌う姿を見届けたい。

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『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽NHK BS・NHK BSプレミアム4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)

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(まいどなニュース特約・佐野 華英)

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