「雪の殿さま」功績紹介 20年以上、結晶を観察 土井利位企画展 茨城・古河

企画展に展示される「雪華図説」(右)と「続雪華図説」

日本で初めて雪の結晶を観察し、「雪華図説」を著した古河藩主、土井利位(としつら)(1789~1848年)の功績を紹介する企画展「雪の殿さま 土井利位」が25日まで、茨城県古河市中央町の古河歴史博物館で開かれている。利位にまつわる特別展示として、同藩お抱えの蒔絵(まきえ)師、原羊遊斎(ようゆうさい)が制作した「蔓梅擬目白蒔絵軸盆(つるうめもどきめじろまきえじくぼん)」とその下絵=いずれも国重要文化財=が期間限定で展示されている。

利位は老中首座として幕政に関わる傍ら、20年以上かけて雪の結晶を観察し、その成果を「雪華図説」(1832年)、「続雪華図説」(1840年)の2冊にまとめた。

利位が結晶をどのように観察していたかは明らかではないが、布に付いた雪をピンセットで静かにつまみ、顕微鏡か拡大鏡で見ていたと考えられる。

利位は茶器や刀装具、ふすまなど身の回りの調度品に雪華模様をデザインさせ、愛用したと伝えられる。自らも型を使って雪華の菓子作りにも熱中した。利位の官位名「大炊頭(おおいのかみ)」にちなみ「大炊模様」として、当時の大名をはじめ庶民の間にも流行し、刀のつば、馬具、美術品、工芸品などに雪華模様が用いられた。

特別展示の「蔓梅擬目白蒔絵軸盆」は絵巻物を載せる器で、展示は12日~25日。下絵(11日まで)は江戸琳派を代表する絵師、酒井抱一が描いた。原羊遊斎について記した古河藩家老、鷹見泉石の日記や、雪華図説のほか、デザインが広く流行したことを示す浮世絵や錦絵なども展示している。

同館の永用俊彦学芸員は「日本で最初に雪の結晶を明確な形で示し、生涯をかけて観察していた。自然科学の先駆けとなる『雪華図説』などを通して利位の功績を知ってほしい」と話す。

午前9時~午後5時。5、13、16、17、19日は休館。問い合わせは同館(電)0280(22)5211。

土井利位の肖像画

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