困惑しているのかも 認知症の犬はどう感じている? 予防法とともに解説

犬の認知症は、加齢により脳の機能が低下して、生活に影響が出ている状態。認知症の犬が穏やかな老後を過ごすためには、飼い主さんの正しい理解が重要とされています。

そこで今回は、認知症の犬がどう感じているのか、獣医師の小澤真希子先生に教えていただきました。認知症の予防法もご紹介するので、あわせて参考にしてみてくださいね。

犬の認知症の症状(1)夜中に鳴き続ける

引用元:Maya Shustov/gettyimages

認知症になった犬は、「のどがかわいた」「トイレに行きたい」などの生理的な欲求で鳴いたり、徘徊症状がある犬の場合は、歩いているうちに転んだり、身動きがとれなくなったりすることで鳴くことがあります。

また、夜になって体の不調や違和感を覚え、「かゆい」「おなかの中が変」「気分が悪い」といった気持ちを訴えるために鳴くことも。なかなかおさまらない夜鳴きは、後者の体の異常を訴えていることのほうが多く、認知症以外の病気が原因になっている可能性が高いといわれています。

夜鳴きをする犬のフォロー方法

犬の夜鳴きが続く場合は、病気が隠れていないか動物病院に相談しましょう。ただし、さまざまな検査を受けないと「ただの認知症」と診断されることもあるので要注意。そのほか、寝る前に必要なお世話をして、生理的な欲求を満たしてあげることも大切です。

犬の認知症の症状(2)部屋の隅や隙間に入って出られなくなる

引用元:AMR Image/gettyimages

認知症によって徘徊する犬は、目的地があるわけでもなく、ただひたすらに前進しています。そのため、テレビの後ろや棚の下など、少しの隙間に意図せずはまりやすくなってしまうのです。

さらに、認知症では脳内の運動機能をつかさどる神経回路に障害が起きていることも多いため、狭い場所で体の向きを変えることや、後ろに下がる動作ができなくなります。そのため、犬は体も動かせずに、ただただ困惑するしかなくなるのです。

部屋の隅や隙間に入って出られなくなる犬のフォロー方法

テレビの後ろなどの隙間は、柵などを使ってふさぎましょう。また、活動範囲が広いとトラブルが起こりやすいので、ある程度区切るのもおすすめです。

犬の認知症をできる限り予防するためのコツ

引用元:Chalabala/gettyimages

認知症をできる限り予防するためにも、以下の3つの方法を愛犬が元気なうちから実践しましょう。

明るい時間帯に散歩に行く

認知症予防には、脳への心地いい刺激が効果的とされています。散歩中、日の光を感じれば視覚的な刺激となり、ニオイをかげば嗅覚の刺激になります。さらに足腰が丈夫になれば、認知症の一症状である、運動機能低下の予防にもつながります。

頭や嗅覚を使う遊びをさせる

おやつを入れた知育おもちゃで愛犬を遊ばせれば、「どうやったらおやつが出せるか?」と考えるので、脳へのいい刺激になります。ニオイをかいでおやつを探すタイプのおもちゃなら、さらに嗅覚も刺激されて効果的です。

いつでも笑顔で声をかける

飼い主さんとのコミュニケーションは、愛犬にとって何よりも大切な刺激です。認知症になると気力が低下したり、情動反応が減ったりするといわれていますが、笑顔で接すれば安心感が強まって、気力低下のいい予防になります。

どんなに予防策を実践していても、認知症を発症する犬はいます。もし愛犬が発症してしまった場合は、しっかりとサポートしてあげられるといいですね。

※犬の認知症(高齢性認知機能不全)は、その症状や状態が病気なのか老化によるものなのか、現段階ではまだはっきり解明されていない部分もあります。

お話を伺った先生:小澤真希子先生(獣医学博士 獣医行動診療科認定医)
参考/「いぬのきもち」2022年9月号『シニア犬の半数近くが発症する!? 理由がわかれば「夜鳴き」「徘徊」「そそう」も正しくフォローできる! 認知症の犬はどう感じてる?』
文/宮下早希
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。

© 株式会社ベネッセコーポレーション