象徴的だったバーレーン戦の1点目。外側にステイで“陰のアシスト”。カギ握る久保・堂安・毎熊のトリオ【アジア杯】

アジアカップのラウンド16でバーレーンに3-1で勝利し、準々決勝に進んだ日本代表。前向きに評価できるのは、選手間のイメージ共有が高まり、各エリアで距離感やコンビネーションにアップデートが見られることだ。

グループステージ3試合目のインドネシア戦から、そのまま引き継がれた中盤から前のポジションは、二者間の連係に加えて、3人目の動きなどもよく見られた。特に目を引いたのは、堂安律と毎熊晟矢に久保建英を加えた右のトライアングルだ。

4-2-3-1とも4-3-3とも取れる森保ジャパンのシステムにあって、久保は前者ならトップ下、後者なら右インサイドハーフを担う。森保一監督はスタートをどちらにするにしても、状況を見ながら臨機応変に可変させていいと選手たちに伝えているという。

左右のインサイドハーフを「10番&8番タイプ」と、ボランチもこなす「6番&8番タイプ」で組み合わせているのも、おそらくそのためだ。バーレーン戦もスタートは旗手怜央が左、前半途中から守田英正が投入されている。

右サイドの関係を見ると、まず左利きの堂安と縦の推進力がある毎熊というタイプの相性が良い。もちろん伊東純也も右外に張るだけでなく、インサイドで絡むこともできるが、基本的には右サイドバックが後ろからサポートしながら攻め上がりのタイミングを見極めることになる。

その場合は菅原由勢のバランスワークが活きやすい。堂安の場合は基本がインになるので、大外のレーンはほぼ毎熊の独壇場となる。

バーレーン戦はインドネシアの5バックを崩す状況に比べると、毎熊も多少バランスを見ながらではあったが、中よりに堂安がボールを持つ時には必ずと言っていいほど、毎熊が高い位置で絡んでいた。

ただ、そればかりだと対戦相手に読まれてしまう。そこで効果的なアクセントになるのが、久保の右ワイドに関わるプレーだ。久保と堂安は東京五輪チームからコンビを組むこともあり、近い距離感でのコンビネーションで何度もゴールチャンスを生み出してきた。

そして流れや時間帯によってはポジションを入れ替える。そこは久保が同ポジションで出ていても、右サイドが伊東なのか堂安なのかで、かなり変わってくるところだ。

久保は2列目としては活動範囲の広い選手だが、伊東と組む場合は右外を彼の突破力を活かすエリアと想定しているので、あまり外側までは行かないし、ポジションチェンジもほとんどしない。

それが堂安だと、良い意味でお互いに遠慮がない関係で、立ち位置が逆になっていることもよくある。彼らの後方に位置する毎熊としても、基本は堂安との縦関係だが、久保と右側で絡むシーンも増えるということだ。

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そうした関係の中で生まれた1つの象徴的なシーンが、バーレーン戦の1点目だった。最終的には毎熊が中央から強烈なミドルシュートを放ち、ポストに弾かれるも、素早く反応した堂安が流し込んだ。

このシーンでは毎熊がインサイドよりのポジションで起点となり、展開されたボールは左サイドで中山雄太と中村敬斗を経由して、中央左で受けた遠藤航が毎熊に戻すという流れだった。

この時に左インサイドハーフの旗手は前に出ており、FWの上田綺世が相手ディフェンスにプレッシャーをかけることで、毎熊がバイタルエリアで前を向ける状況を作っていた。

その時に右側はどうだったのか。この時、久保が右外、堂安が中に入れ替わっていたが、毎熊がインでボールに絡んだ状況で、久保は外側でステイしていた。逆サイドは中村が外に張ることで、バーレーンの4バックは両側に意識がストレッチされることになり、その合間に上田、旗手、そして堂安が入り込むような構図になっていたのだ。

そうなるとバーレーンのディフェンスも毎熊にプレッシャーをかけにくい。毎熊は遠藤からボールを受ける前に、ミドルシュートを打つことは決めてボールをコントロールしたという。

このシーンでは直接ボールに関わらなかった久保の“陰のアシスト”が効いていたが、久保、堂安、毎熊の三人は状況を見ながら、いろいろな関わり方ができるのは大きな強みだ。そして、毎熊の積極的な攻撃参加を可能にしているのは、左サイドバックの中山だ。

森保監督もそうした全体のバランスを見極めてメンバーを決め、必要なら指示も与えているのだろう。ただ、大きなメカニズムを設計してしまえば、ある程度、三人に局面のアイデアを任せてしまった方が、相手側にとっても読みにくい崩しのソリューションが引き出されるかもしれない。

ファイナルまであと3試合あり、イランに勝利しても中3日、中2日と続くので、そのままスタメンが固定されていく可能性の方が低い。しかし、この三人は相性が良く、組めば組むほどバリエーションも生まれる期待も込めて、注目していきたいキーユニットだ。

文●河治良幸

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