日本の「レイシャルプロファイリング」訴訟、BBCやロイターなど海外メディアも相次ぎ報道

日本のレイシャルプロファイリグ訴訟を報じる海外メディア

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肌の色や「外国人ふうの見た目」などを理由とした人種差別的な職務質問を受けたとして、外国にルーツのある3人が国、東京都、愛知県の3者に損害賠償などを求めて東京地裁に提訴したことについて、海外メディアも続々と報じている。

警察などの法執行機関が、「人種」や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャルプロファイリング(Racial Profiling)」と呼ばれる。

BBCやTIME誌など多くの海外メディアが、記事の見出しに「racial profiling」という言葉を用いて、日本の警察による差別的な職務質問の違法性を問う提訴の動きを世界に向けて配信した。

どんな訴訟?

訴状などによると、原告は20〜50代の3人。いずれも外国にルーツがあり、日本で暮らしている。

原告の一人で自営業のゼインさん(26)は、パキスタンで生まれ、8歳で来日。2011年に家族と共に日本国籍を取得した。「外国人ふう」の外見を理由に職務質問を繰り返し受けたと訴え、回数は15回ほどに上る。

2019年に愛知県警察の警察官から名古屋駅で受けた職務質問でも、いつものように在留カードの提示を求められた。ゼインさんが「在留カードは持っていません。持っていないとどうなりますか?」と尋ねると、「持っていないなら君をここで逮捕しなければならない」と警察官に迫られたと証言する。

南太平洋諸島の国で生まれ、永住権を取得している原告のマシューさんは、これまでに100回ほど職務質問を受け、1日に2回職務質問を受けたことが4度あると主張する。

日本に約10年暮らしているアフリカ系アメリカ人の原告モーリスさんは2021年4月、自宅からバイクで出かけたところ、交通違反がないにもかかわらず警察官に停止を命じられ、職務質問を受けた。これまでに16、17回ほど職務質問されたという。

弁護団は、原告たちが受けてきた職務質問が、法の下の平等や幸福追求権を定めた憲法や日本も批准する人種差別撤廃条約などに違反すると主張。

国などに対して原告一人当たり330万円の損害賠償の支払いのほか、レイシャルプロファイリングによる差別的な職務質問の運用を違法だと認めること、国は差別的な職務質問をしないよう指揮監督する義務があることの確認を求めている。

被告側の警察庁、警視庁、愛知県警察はいずれも訴状が届いていないとしてコメントしなかった。

BBCやCNNなども報道

原告と弁護団が提訴後に東京都内で開いた記者会見の様子を、全国紙やテレビ局など多くの日本のメディアが報道した。

このほか、BBCやTIME誌、CNNなどの海外メディアも日本のレイシャルプロファイリングを巡る訴訟の動きを報じている(見出しや記事の内容はいずれも2月2日午前時点)。

Bloombergは「Police Racial Profiling Allegations Spark Japan Lawsuit(警察によるレイシャルプロファイリングの被害の訴えが日本で訴訟に発展)」との見出しで報道

TIME誌にも配信・掲載され、「Japan Police Accused of Racial Profiling(日本の警察がレイシャルプロファイリングで訴えられる)」との見出しで、原告側の請求内容などを伝えた。

TIME誌に配信された記事では、「この訴訟は、日本が多様化する人口をどのように管理するかという、煮えたぎる問題に拍車をかけるものだ。労働人口の減少を補うため、日本は移民への依存度を高めている」などと掲載した。

記事は、ミックスルーツの男性が2021年、東京駅構内で警察官から「ドレッドヘアーで薬物を持っている方が経験上多かった」ことを理由に職務質問をされた動画がSNS上で拡散したことに言及し、この動画以降「人種差別や人種プロファイリングに対する意識が(日本で)高まっている」と報じた。

CNNは「Foreign-born residents in Japan sue government for alleged racial profiling(日本で暮らす外国出身者たち、レイシャルプロファイリングの疑いで政府を訴える)」というタイトルで配信した。

記事では「この国の高い民族的同質性は、外見が異なる人々、特に肌の色が濃い人たちは、自らを日本人であるとに認識していても望まない注目を集めたり、異質な存在として感じられたりすることを意味する」と指摘している。

2024年のミス日本コンテストで、ウクライナ生まれのモデルがグランプリに選ばれたことに言及するメディアもあった。

ロイター通信は「先週、ウクライナ出身で日本に帰化した女性がミス日本の栄冠に輝いたことで、日本人であること、日本人に見えることの意味を巡る議論が再燃している」と報じた。

BBCも「ウクライナ生まれのモデルがミス日本に選ばれたことを受け、『日本人』とは何かという議論が再び巻き起こっている」と言及している。

日本のレイシャルプロファイリングの問題を巡っては、在日アメリカ大使館が2021年12月にX(当時のTwitter)で「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告がありました」などと警告を投稿した際にも、ワシントンポストなど複数の海外メディアが報じていた。

【アンケート】

ハフポスト日本版では、人種差別的な職務質問(レイシャル・プロファイリング)に関して、警察官や元警察官を対象にアンケートを行っています。体験・ご意見をお寄せください。回答はこちらから

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