埼玉各地に医師派遣「研修医や、6カ月のローテーション医師も」…県「不十分」 順天堂の新病院計画「派遣基地となる新病院建設が優先」、県「新病院が拠点?本院から派遣を」 知事「順天堂と直接話す」

順天堂大学医学部付属病院の整備予定地=2021年、埼玉県さいたま市緑区

 埼玉県医療審議会(金井忠男会長)は1日、さいたま市美園地区で新病院建設を計画する学校法人順天堂による医師派遣について、計画通り実施し「(派遣を求める)5病院の希望を満たすよう派遣者数を漸増させる」ことなどを求める答申を行った。県は今月上旬にも同審議会が答申で挙げた要望事項を順天堂に伝え、実効性のある回答が得られれば病院整備費用に関する協議に入るとしている。また同日は、順天堂から秩父市立病院に内科医1人が派遣された。

 これまでに順天堂は県医療審議会に対し、開院2年後まで年2人の医師を派遣し、段階的に増やして開院5年後以降は年20人とする計画を示していた。また、研修医など、6カ月のローテーション医師の場合もあるとしていた。

 答申は、計画で示された派遣数について「医師派遣に積極的に協力するとした公募条件に鑑みて十分とは言い難い」と指摘。派遣数を増やすよう強く希望するとともに、派遣に臨床研修医を含めないことや、期間を1年以上とすることなどを求めた。

 順天堂は昨年、済生会加須病院に整形外科医1人を派遣したが、その後、研修医に交代していた。県医療審議会では複数の委員が派遣数の少なさに不満を示す一方、一部の委員からは「医師派遣に光が当たり過ぎているが本来の柱は病院設置」と反対意見も上がった。順天堂も「派遣の基地となる病院建設が一番優先」と強調していた。

 大野知事に答申を手渡した金井会長は「(新)病院を拠点に派遣することは正確ではない。建設と派遣を同時並行するのが公募要件で、新病院ではなく本院から派遣するのが当然という意見がある」と説明。大野知事は「順天堂大学に審議会が求める医師派遣の確実な実施を強く求める」と述べ、「ここから先は(県が)順天堂と直接話す」として県から同審議会に報告することや今後も意見を求めることなどを確認した。

 また、答申には「建設費用などについて県民に真摯(しんし)に説明すべき」との意見が盛り込まれた。県は2018年、2分の1を上限に整備費用を補助するとの内容の確認書を順天堂と交わした。大野知事は昨年の12月定例県議会で「医師派遣人数など条件が整った後に協議となる」と答弁。費用総額はすでに順天堂から示されたが、県は「円滑な協議ができなくなる恐れがあり、大学側も工事契約締結への支障を懸念し公開を望んでいない」とし、順天堂側も費用の詳細や公開時期について説明を避けており、同審議会や県議会で透明性のある費用議論を求める声が上がっている。

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