上川外相「ありがたい」発言で米女性議員の過去のスピーチが再び脚光。蔑視発言の同僚に痛快な反論

民主党アレクサンドリア・オカシオコルテス議員(左)と、共和党のテッド・ヨーホー議員

自民党の麻生太郎副総裁が、上川陽子外相を「おばさん」「そんなに美しい方とは言わない」などと容姿を蔑む発言をした問題で、上川外相は1月30日の記者会見で「様々な意見や声があるということは承知しているが、どのような声もありがたく受け止めております」と述べ、受け流す姿勢を示した。

ルッキズム発言に抗議せず、問題視しない上川氏の対応には「『こういう発言は受け流せばいい』という、間違ったメッセージを社会に与える」など批判の声が広がった。

上川氏の発言を受け、過去に米下院の女性議員が、性差別的な暴言を発したとされる同僚議員を議場で一蹴した時のスピーチに再び注目が集まっている。

何があった?

改めて脚光を浴びているのは、米民主党議員のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏の2020年7月のスピーチだ。

米下院の議事堂で同20日、共和党議員のテッド・ヨーホー氏がオカシオコルテス氏に対して言ったとされる発言が問題となった。

ABCニュースなどによると、「新型コロナウイルスの感染拡大の中、ニューヨーク市では貧困と失業が犯罪の急増を招いている」とするオカシオコルテス氏の見解に対し、ヨーホー氏は「非常に不快だ」「あなたは頭がおかしい」などと非難。

オカシオコルテス氏が「失礼です」と返した後、ヨーホー氏がオカシオコルテス氏の背後で女性を蔑視する暴言を浴びせるのを現地メディアが報じた

ヨーホー氏は同22日、オカシオコルテス氏への暴言を以下のように否定。

「私は45年前に結婚し、2人の娘がいる。自分の発言については十分に認識している。不快な呼び方は同僚議員(オカシオコルテス氏)に対してしたわけではなく、誤解されたならお詫びしたい」と述べた。

こうしたヨーホー氏の発言に、オカシオコルテス氏は23日に議事堂で行ったスピーチで、社会に根深く残る性差別の実態と、ヨーホー氏の釈明の問題点を鋭く指摘した。

「娘がいるからと言ってまともな男性になるわけではない」

USA Todayは、オカシオコルテス氏のスピーチ全文を掲載。その一部を紹介する。

「ヨーホー議員の言葉が、私を深く傷つけたわけではないことを明確に述べたいと思います。なぜなら私は労働者としてレストランで働いたり、地下鉄に乗ったりしたことがあり、ニューヨークの街を歩いたことがあるから。

この類の(女性を侮辱する)言葉は真新しいものではありません。

私がレストランでハラスメントを受けた時には、ヨーホー議員が発した言葉や、同じような言葉を放つ男性に出会いました。ニューヨーク市の地下鉄でも同様の嫌がらせに遭遇しました。これらは新しいことではなく、それこそが問題なのです」

「(発言当時)ヨーホー議員は一人ではなく、他の議員と歩いていました。この問題は一つの事件ではないことがわかります。問題は、責任を問われないことや、女性に対する暴力と暴力的な言葉遣いを容認する文化であり、それらを支える力という全体的な構造にあります」

「(発言当時)ヨーホー議員は一人ではなく、他の議員と歩いていました。この問題は一つの事件ではないことがわかります。問題は、責任を問われないことや、女性に対する暴力と暴力的な言葉遣いを容認する文化であり、それらを支える力という全体的な構造にあります」

オカシオコルテス氏は演説で、ヨーホー氏が自身が既婚者で娘がいることを用いて、暴言を釈明した点についても言及。

「私は、女性に侮辱的な言葉を使うことに対して反省しない男性からの謝罪をいつまでも待つつもりはありません。しかし、女性や妻、娘を愚かな行いの言い訳に使うことを、私は問題と考えます」

「彼はメディアの前で、そうした言葉を妻や娘、彼のコミュニティーの女性たちに使うことを許容した。それは到底受け入れられることではなく、私はそのためにこうして立ち上がりました」

「ヨーホー氏は妻と2人の娘がいると述べました。私はヨーホー議員の下の娘さんより2歳年下です。私も誰かの娘です。

私が両親の娘であること、そして私は男性からの侮辱を容認するように両親から育てられたわけではないことを両親に示すために、私はここにいるのです」

「娘がいるからと言って、妻がいるからと言って、まともな男性になるわけではないと信じています。尊厳と敬意を持って他人と接することで、人は真っ当な人間になるのです」

ニューヨーク出身のオカシオコルテス氏は、プエルトリコ出身の母親を持つ。政界に入る前は、バーテンダーやウェイトレスとして働いていた。当時29歳だった2018年の中間選挙で、史上最年少の女性議員として当選。若者を中心に支持を集め、「AOC」の愛称で知られている。

(この記事は、2020年7月の記事を加筆・再編集しています)

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