ズワイガニと向き合い「優しい漁業」目指す女性 週に一度は船上で1泊2日「体力勝負」

ズワイガニの調査で個体の大きさを測る丸山さん(宮津市小田宿野・府海洋センター)

 水揚げされたばかりのズワイガニの口元を手際よくはさみで切り、組織を採取する。個体が大きくなる脱皮時期を解明するためのサンプルになる。2020年に京都府海洋センターに入庁して以来、カニを研究している。

 丸山香野子(まるやま・かのこ)さん(27)は、京都市右京区出身。幼少期からアウトドア好きの両親に山や海に連れられ、生き物に触れるのが好きになった。特に、図鑑でしか見る機会のない海洋生物への興味は尽きず、三重大の生物資源学部に進学した。

 転機は3年時の航海実習だ。東シナ海で底引き網の調査をする航海中、調達した新鮮なブリ、アジに感動し、水産関係の仕事への関心が高まった。

 入庁後、資源管理型漁業担当としてズワイガニの研究を続ける。「カニは初めてだった上に資源管理の解析は計算が複雑で、ちゃんとできるか不安だった」と振り返る。

 研究室で水槽や顕微鏡とのにらめっこだった学生時代とは一転。調査のため船上へ、市場へと駆け回る。底引き網のシーズンになると週1回は船で1泊2日を過ごす。夜遅くまで操業し、波が高ければ酔う。「体力勝負です」と苦笑する。

 昨秋、未成熟の雄のズワイガニ「モモガニ」を規制する新たな取り組みに向け、京丹後と舞鶴の漁師に協力を求めてその効果を説明した。「やろうか」と納得してもらえた時、仕事のやりがいを覚えた。

 京都の海は漁場としては小さいが、カニにブリ、トリガイと高品質の魚介が多い。取り過ぎなくても水産関係者が潤う「優しい漁業」を実現するため、高付加価値につながる研究を目指す。「分からないことは多いが、こつこつデータを集めて解明したい」と前を見据える。

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