【お天気気象転結】京アニ裁判を取材して……

文化放送メールマガジン(毎週金曜日配信)にて連載中の「佳子・純子のお天気気象転結」。気象予報士の伊藤佳子記者・鈴木純子アナウンサーが、毎日にちょっと役立つお天気情報をお届けしている。この記事では全文をご紹介。

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▼2月2日配信号 担当伊藤佳子

明日2月3日は「節分」、4日は「立春」です。
元日から思いもかけず、過酷な日々を過ごしている能登半島地震被災地の皆さんにとって、少しでも春を感じられるよう復旧が進んでほしいものですが、それが難しいこともあります。

先週1月25日、京都アニメーション放火殺人事件の裁判を取材させていただきました。
36人という、記録が残る平成以降で最も多くの犠牲者を出し、32人が重軽傷を負った京アニ事件の判決公判。

▲裁判所

前日は記録的な大雪で交通機関にも大きな影響が出る中、東海道新幹線が30分遅れで京都駅に到着したときには、大粒の雪が斜めに降っていました。
翌朝も雪が舞う中、23の傍聴席を求めておよそ18倍の409人が列を作りました。早い人は朝7時から並んでいて「京アニが好きだから判決を自分の目で見届けたい」という若い人も多くいました。

▲傍聴希望者

裁判長は
「有罪判決ですが、主文は最後に告げます」と2度繰り返し、判決理由の朗読を始め、多くの記者がバタバタと速報を伝えに法廷を出て行きました。
午後1時40分過ぎ、裁判長から「被告人を死刑に処する」と2度繰り返されたとき、青葉被告はほとんど身動きせず、「主文は以上です」と裁判長が青葉被告の顔をじっと見て伝えると、軽く頭を下げました。車椅子を職員に押されて退廷するときも、目を伏せたままでした。
今回の裁判は、青葉被告の責任能力の有無が大きな争点でしたが、裁判長は「犯行当時、被告は心神喪失でも耗弱でもない」として、責任能力を認めました。
妄想性障害ではあるものの、犯行の手段を計画的に考え、犯行直前に13分間逡巡するなど、善悪を区別する責任能力はあったということです。
その上で、「36人の尊い命が奪われたことはあまりにも重大で悲惨だ。一瞬で炎と煙に包まれ、逃げる間もなく、他の人に重なるようになるか、高熱で呼吸困難になったり、一酸化炭素中毒で亡くなった。一瞬にして地獄と化した第一スタジオで非業の死を遂げた被害者の苦痛・恐怖は計り知れず、筆舌に尽くしがたい」と話し、傍聴席の遺族は目にハンカチをあて涙ぐんでいる人もいました。
青葉被告側は、翌日判決を不服として控訴、裁判はまだ長く続きそうです。

「立春」は毎年来ますが、ご遺族や被害者にとって本当の春がくることは難しい。
京都駅に行くと京アニのショップがあり、ファンがグッズを買い求める姿が……。

「普通の生活」を送れることは、どれほど幸せなことかと感じます。

気象予報士 防災士 気象庁担当記者 伊藤佳子

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