SNSで集客 “2000万円以上”荒稼ぎ「20代麻薬密売集団」が捕まる… 集合住宅で大麻栽培 “民泊と隠語”で捜査かく乱した約3年の逃走劇

大麻関連の検挙者数は30代未満の若者が7割を占めており、警察も警戒している(HIROKI / PIXTA)

1月23日。大阪府警は共謀して営利目的で大阪市内の民泊施設などにおいて大麻等を所持したとして無職・渡辺太雅(たいが・26)他14名を大麻取締法違反容疑等で逮捕したと発表した。渡辺らは警察のマークから逃れるため、1週間ごとに大阪市内の民泊を転々としていたという……。

事件発覚の端緒となった民泊への不法滞在

大阪府警担当記者が渡辺らの逮捕の経緯について説明する。

「事件発覚の端緒となったのは大阪市内の民泊の管理人から『民泊の部屋に無断で入っている人が居る』との令和3年11月の通報でした。警察が現場に駆け付けたところ渡辺らのグループの1人を認知。民泊からは大麻、大麻液体、覚せい剤錠剤、MDMA錠などの規制薬物が発見され、それらの押収品の指紋などから複数の他の人物の関与が浮上し、警察は捜査を開始しました」

捜査を開始した警察は大麻密売グループの全貌をつかむべく通話明細を取るなどの手法で密売人らを把握。徐々に包囲網を狭めていき令和5年2月から7月にかけ、渡辺らが大麻を密売していた客を逮捕した。

大麻360グラム、コカイン16グラムを押収

「(客らから)証拠を得た警察は同年9月に民泊の一室への強制捜査に着手し、大麻360グラム、コカイン16グラムを押収。同所にいた渡辺ら4人を営利目的共同所持容疑で現行犯逮捕しました」(同前)

その後も警察は捜査を継続。麻薬の使用などの余罪で逮捕、起訴を繰り返し、密売グループと客の逮捕者は最終的に15名にのぼった……。

「渡辺らのグループは集合住宅で大麻を栽培し、大麻の隠語を意味する〝野菜〟手渡しを意味する〝手押し〟を前面に打ち出した『大阪野菜屋さん@大阪手押し』のアカウント名で会員制交流サイト(SNS)を通じて客を集めていました。渡辺らの密売グループは中学校時代からの友人のつながりで2つのグループで各自の密売ルートを持ち薬物の保管場所として民泊を使っていました」

SNSで集客し、約5400回の大麻等密売

渡辺らが開設していたアカウントのフォロワーは470人に上り、令和2年夏ごろから令和5年9月までの3年間にかけ、約5400回の大麻等の密売を繰り返し、「2000万円以上の売り上げがあった」(捜査関係者)という。

「大阪府警は昨年も平均年齢21歳の薬物密売グループを逮捕しています。大麻は覚せい剤と違って比較的容易に栽培しやすいということやSNSの発達からこうした若年層の密売グループが今後も出てくる可能性が考えられます」(前出の府警担当記者)

警察は警戒感を強めているという……。

現在、大麻には使用罪がなく、24年にも改正により新設される。その背景には、増加する検挙者数の中で、若年層の占める割合が高まっていることがある。

厚労省の発表資料では、2022年で5546人が検挙されており、これは最多の覚醒剤の6289人に迫る。その内訳は、30歳未満が3840人で約7割を占め、若者の“大麻汚染”の深刻ぶりは鮮明だ。

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