夫は64歳。月収48万円を超えて特別支給の老齢厚生年金が支払い停止になりました。今後どうしたらいいでしょうか?

年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、在職老齢年金制度で特別支給の老齢厚生年金がすべて支給停止になった人からの質問に専門家が回答します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に回答します。 今回は、在職老齢年金制度で特別支給の老齢厚生年金がすべて支給停止になった人からの質問です。

Q:夫は64歳。月収48万円を超えて特別支給の老齢厚生年金が支払い停止になりました。今後の年金についてアドバイスをお願いします

「夫は64歳になりました。現在も契約社員として仕事をしています。2023年7月ごろに年金事務所からハガキであなたの1年間の特別支給の老齢厚生年金の支給額はおよそ120万円ほどです、手続きしてください。というような内容が届きました。誕生月の9月に申請しに行くと『在職老齢年金制度で支給停止になります』とのこと。120万円がすべて支給停止となりました。 収入が一定以上あるからという理由ですが、収入には交通費が2万円と今も払い続けている厚生年金5万円ほど合計7万以上が含まれています。交通費まで含まれるのはおかしくないですか? しかも年金も支給停止なのに、まだ年金保険料を納めなくてはならないなんて。思えば20年勤めた会社が倒産して次の仕事を見つけるまでの期間も年金を払い続けました。手術のために入院していた時も収入が下がっても年金を払いました。誰も助けてくれませんでした。今後の私たちの年金についてアドバイスをお願いします」(chan chanさん)

A:このまま厚生年金に加入して働き続けた場合、65歳で老齢厚生年金は、厚生年金への加入記録をもとに再計算され、その後も1年ごとに厚生年金保険料が反映される形(在職時定時改定)で老齢厚生年金は増額します

60歳以降、厚生年金に加入して働いている場合、特別支給の老齢厚生年金や65歳以降の老齢厚生年金は、基本月額(老齢厚生年金の12分の1)と総報酬月額相当額(年収の12分の1)を合計し48万円超えた分の2分の1が、特別支給の老齢厚生年金や65歳以降の老齢厚生年金から差し引かれます。これを在職老齢年金制度といいます。 相談者「chan chan」さんの夫が64歳からもらえる特別支給の老齢厚生年金は、在職老齢年金制度で調整されて支給されなかったとのこと。特別支給の老齢厚生年金120万円は、給与や賞与が下がるなど年収が下がらない限り、残念ながら支給されません。 交通費も収入に含まれることに疑問を感じていらっしゃるようですが、在職老齢年金制度の計算に用いられる総報酬月額相当額とは、標準報酬月額(一定範囲の月給を社会保険料計算のため区分した金額)から計算されます。標準報酬月額を計算する際に含まれる「報酬」とは被保険者が事業主から労務の対償として支給されるすべてのものをいい、賃金、給料、通勤手当などその名称にかかわらず対象になります。 年金についてのアドバイスですが、このまま「chan chan」さんの夫が厚生年金に加入して働き続けた場合、65歳で老齢厚生年金は、厚生年金への加入記録をもとに再計算され、その後も1年ごとに厚生年金保険料が反映される形(在職時定時改定)で老齢厚生年金は増額します。そして、65歳過ぎて支給される老齢基礎年金は、どんなに稼いでも在職老齢年金制度で調整を受けることはありません。 文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士) 銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。 (文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))

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