角界ホープ・大の里、元稀勢の里の徹底指導で躍進も課題は「精神面のもろさ」

大の里(写真左)は二所ノ関親方(同右)の指導で力をつけている(写真:共同通信)

大相撲初場所で新入幕にして11勝を挙げ、敢闘賞を受賞する活躍をみせた西前頭15枚目・大の里(23、二所ノ関)が、2月1日に相撲教習所を卒業。それにあたって「充実した教習所生活でした。これをよい糧にして、これから頑張ります」と語った。新入幕の初場所で横綱、大関に挑戦するという異例の活躍だったが、スピード出世のために髪はざんばらのままだ。

茨城県・阿見町にある二所ノ関部屋から、教習所での朝稽古に参加するため、始発電車に乗って両国へ通った日々を振り返り、大の里は「朝からハードスケジュールでしたね」と苦笑いをみせる一コマも。アマチュア時代に輝かしい実績を残している大の里には、複数の部屋からの誘いがあった。多くの相撲部屋が都内にあるなか、茨城県にある二所ノ関部屋入門を決意するにいたったのは、元横綱稀勢の里である二所ノ関親方の存在が大きかったという。相撲リポーターの横野レイコさんが語る。

「大の里は新潟県の高校出身。そのため相撲に打ち込む環境は都会よりも静かなところのほうがよいと考えていました。二所ノ関部屋の環境は相撲に打ち込むのには最高の環境だと抵抗はなかったようです。昨年3月に大の里の入門が決まったときには、よほど嬉しかったのか、二所ノ関親方はとても上機嫌だったのが印象深いですね」

入門後は、大の里のポテンシャルを引き出すため、二所ノ関親方は基礎から丁寧に指導を続けてきた。

「大の里の恵まれた体格は、横綱稀勢の里にひけをとりません。体格が同じなので、親方は現役時代の着物などをさっそく大の里にあげているみたいです。それまでは自分より小さい力士しか部屋にいなかったので、自分の着物をあげることができるような体格の弟子ができたのもうれしかったみたいです。現役時代に師匠(元横綱隆の里)から教わったことを大の里に教えこもうとしています。自分が師匠から向けられていたのと同じような視線を大の里に向けているように感じます」(横野さん、以下同)

取材のオファーがたくさん来ていても、タイミングや内容をしっかり見定めているという。これも、現役時代の稀勢の里に師匠がしていたことと重なる。

「相撲の才能も光るものがあると言われています。ひとつ、二所ノ関親方が気にしているのは、精神面に弱い部分があるところ。大事な一番になると十分に力を発揮することができないこともあって、現役時代に同様の指摘をされていた親方は『何もそんなところまで(自分に)似なくていいのに……』とこぼしていました」

来場所は番付が上がり、上位陣との取組も増え、相手も研究してくるので初場所のようにいくとは限らない。厳しい稽古で、さらなる躍進を目指していく。

「大の里の実家は石川県にあり、1月1日の地震では、親戚の家にも被害が出たそうです。近々、慰問にも訪れる予定だそうですが、『自分が頑張ることで大好きな故郷の人たちを励ましたい』、というプロ意識も原動力になっているようです」

大の里のスケールの大きな相撲が、被災地に希望を届ける。

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