「龍が如く8」プレイレポート――二人の主人公のドラマ、劇的な進化を遂げたバトル、広大かつ密度の高いフィールドとあらゆる要素がシリーズ最高峰の出来

2024年1月26日に発売されたPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)用ソフト「龍が如く8」。そのプレイレポートをお届けする。

いよいよ発売を迎えた「龍が如く」シリーズのナンバリング最新作「龍が如く8」。前作「龍が如く7」で主人公を務めた春日一番と、「龍が如く」シリーズの多くの作品で主人公を務めた桐生一馬の二人が主人公を務める作品だ。

現在も多くのプレイヤーが夢中になって本作を楽しんでいることかと思うが、改めてその内容を紹介していきたい。

■再びドン底から這い上がる一番と、桐生の生き様が描かれる物語

本作のストーリーは「7」本編から数年後、春日一番の視点でスタートする。「7」では一度はホームレスにまで落ちるドン底から這い上がった一番だが、「8」ではハローワークの職員として立派に働いており、異人町でも都知事の不正を暴いた「ハマの英雄」として慕われている。

同じくドン底を味わった、難波を始めとする「7」の仲間たちもそれぞれの道をしっかりと歩み初めており、「7」からのキャラクターの成長をしっかりと感じられる……ところだったのだが、とある事件をきっかけに一番たちは再びドン底を味あうことになる。

序盤では、一番・難波・安達の3人パーティが再結成されるのだが、「7」序盤のオッサン3人がボロアパートで安酒を飲み交わすシーンが一番のお気に入りだった身としては、あの頃そのままの3人の関係性が垣間見える序盤の時点で、すでにテンションが上がりまくっていた。

その後一番は、元・荒川組若頭で服役中のはずの沢城丈と再会を果たし、ある事情からハワイのホノルルに旅立つことに。

ここからようやく「8」の主舞台であるハワイでのストーリーが展開されるが、ある事情でハワイを訪れていた桐生一馬、ハワイ在住のタクシードライバーであるエリック・トミザワ、同じくハワイ在住の家事手伝いである不二宮千歳といったキャラクターたちと行動と共にすることになる。

とくにトミザワと千歳の二人は、かなり意外な形で一番と関わることになり、「7」の時とは一味違ったパーティ内の人間関係が築かれていくのが新鮮で面白い。今回もまた、一番の人たらしっぷりを存分に堪能することができる。

また、「8」における桐生が末期がんに侵されていることも序盤に明かされる。

筆者は桐生が主人公に戻るという情報を聞いた時は、「7」で一番がシリーズの看板を受け継ぐに相応しい魅力的な主人公となっていただけに、内心複雑な心境だった。しかし実際にプレイした今は、今後の「龍が如く」シリーズのためにも、本作における春日と桐生の共演は絶対必要なものだったと感じられている。

「龍が如く」シリーズは、作中も現実世界とまったく同じ年月が経過しているのも特徴。シリーズを通して、10年、20年と愛されてきた主人公は他タイトルでも珍しくないが、プレイヤーと一緒に18年も歳をとった主人公というのは桐生一馬以外にはほぼいないのではないだろうか。桐生がこれまでの自身の半生を振り返るエンディングノートも描かれる本作のストーリーは、シリーズ第1作からこんなにも時間が経ったということを実感させてくれる。

もし「龍が如く」シリーズをプレイしていなかったとしても、昔から桐生一馬というキャラクターの存在は知っていたという人は多いはず。桐生一馬との付き合いが長いほど、本作のストーリーは心を打つ内容となっている。

■任意の移動が可能になり、劇的に体験が変化したバトル

「7」から、もっとも大きな進化を遂げたと言えるのがバトルシステムだ。「8」でも「7」から引き続きコマンドバトル方式が採用されているが、手触りとしてはほとんど別物になったと言ってもいい程、プレイ体験が変わっている。

「7」は間違いなく名作で、初のコマンドバトルシステムも決して悪くはなかったのだが、テンポの悪さやプレイヤーが介入できる余地の少なさなど、改善の余地も多いという印象だった。

画像はPS5「龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル」のもの。

システム的にもっとも大きく変わったのは、キャラクターの行動決定時、移動力の範囲内で自由にフィールドを移動できるという点だが、この1点の変更があらゆる要素に対して大きな影響を及ぼしている。

本作のコマンドバトルでは、プレイヤーが行動指示を出すキャラクター以外は常に移動し続けており、敵味方の位置関係が常に変化するのが特徴。

攻撃が命中した場合、真後ろに向かって敵を大きく吹き飛ばすが、この進路上に敵がいる場合はダメージが発生。さらにふっとばした方向に味方がいれば、ふっとんだ敵を追撃してくれることもある。このふっとばしを利用した戦術は、本作のバトルの中でもかなり重要な位置づけとなっている。

攻撃時に敵がふっとぶ方向を矢印で示してくれるように。

キャラクターの移動範囲内に三角コーンや椅子、ドラム缶などのオブジェクトが存在している場合は、オブジェクトを拾って強力な攻撃を繰り出してくれる。

さらに範囲を対象としたスキルを発動する際には、発動時のキャラクターの位置に関係によって何体を巻き込めるかが変わってくる。敵味方の位置はリアルタイムで細かく変わるので、スキルを使うタイミングによっては、敵の集団を狙ったはずが1体しか巻き込めなかった……といったケースも発生する。

どれも要素自体は「7」にも存在していたが、キャラクターの移動が可能になり、プレイヤーの戦略の一部として組み込めるようになったことで、さまざまな要素が噛み合いバトル全体に劇的な変化が起きているのが非常に興味深い。

他にも新たな要素としては、敵の近くで攻撃を行った場合のみ近接ボーナスが発動し、より大きなダメージを与えられるように(移動範囲外にいる敵にも攻撃自体は行える)。敵をふっとばした後は、味方との距離が離れることが多いので、HPが減りダウンした敵を追撃するか、近接ボーナスが入る近くの敵を攻撃するかという選択が頻繁に発生する。

背後から敵を攻撃した場合はバックアタックが発生し、大幅にダメージが上昇する。1対1で戦っている時は、操作キャラの方向に向きを変えてくるので狙うのが難しいが、複数人で同じ敵を狙っている場合は、挑発系のスキルなどで注目を集め、フリーになった別の味方が背後から攻撃するといった戦法が効果的だった。

この2つの要素も含め、「8」のバトルは、「どの位置で、どの方向から、どの敵を狙うか」によって状況が大きく変化するのが特徴と言える。「7」では、範囲スキルが揃うまでの序盤は、ほぼ通常攻撃で一体ずつ敵を倒していくしか選択肢がなく、テンポが悪く単調に感じる部分もあった。

対する「8」では吹き飛ばしの巻き込みや連携、近接ボーナスを使いこなせば、通常攻撃でも複数の敵を撃破することが可能で、序盤からめちゃくちゃバトルが楽しい。コマンド方式のRPGは、序盤はどうしても通常攻撃を連打するだけになりがちなので、通常攻撃を指示しているだけでも楽しい本作は、革命的だと感じたほど。

どんなバトルでも、「どう攻撃すれば、効率よくダメージが与えられるか」をプレイヤーが自然と考えながら戦うような設計になっており、単調さを補いつつ、ゲームテンポの改善にも成功している。「7」→「8」の流れで、「龍が如く」シリーズならではの唯一無二のコマンドバトルの確立に完全に成功したという印象だ。

レベル差が大きく開いている敵を相手にする際「クイックバトル」を選択可能になったのも嬉しい点。

バトル開始と同時に味方が一斉に攻撃を行い、敵を瞬時に全滅してくれるシステムで、獲得経験値が減少するデメリットこそあるものの、とくにリソースを消費せず行えるため使い勝手が非常に良い。弱いザコ敵とエンカウントしてしまった際に一瞬でバトルを終了できるのはありがたく、レベルを上げれば上げるほどクイックバトルが選択できる対象が増えていくため、マップの探索がどんどん快適になっていく。育成と探索が「7」以上に非常に良いシナジーを生み出すことに成功している。

それぞれのキャラクターの個性も前作以上に際立つようになっているが、「ヤクザ」「ラッシュ」「壊し屋」の3つのスタイルをいつでも切り替えながら戦う桐生の固有ジョブ「堂島の龍」が、使っていてとくに面白かった。

基本となる「ヤクザ」は、従来の「龍が如く」シリーズの桐生のケンカバトルを再現したスタイルで、状況に応じてヒートアクションが発動するのが特徴。例えば川の近くにいる敵を攻撃すると、水中に敵を投げ飛ばし、残りHPを無視して一気に戦闘不能する、シリーズファンには馴染み深いヒートアクションが発動する。ある程度シリーズの知識があると、「このシチュエーションならあの技が出そうだな」と予想ができるスタイルでもある。

「ラッシュ」は、他のスタイルよりも攻撃力が少し低い分、2回攻撃が可能という強みをもつスタイル。2回行えるのは通常攻撃だけだが、移動も2回分行えるため、位置取りの自由度が高い。1回目の攻撃で敵を吹き飛ばしてダウンさせた後、2回目の攻撃で近づいて自分でダウンを追撃する戦法も強力だった。残りHPが少ない敵なら、一発の攻撃力が低めのデメリットも気にならないので、トドメを刺した直後に別の敵に攻撃を仕掛けることも可能になっている。

「壊し屋」は、ガードを無視できる「投げ」に特化したスタイル。本作のバトルでは、敵がガード状態に入ると与えられるダメージが大幅に軽減するが、投げ攻撃はそのガード状態を解除し、さらに一定時間ガードを使用不能にできる。投げ攻撃自体は、他のキャラクターもジョブによってはスキルで使用できるが、桐生はMPを使わずに投げ技が使えるのが便利だ。

状況に応じてこの3つのスタイルを切り替えられるのは桐生だけ。プレイアブルキャラクターの中でもとくにオンリーワンで、飛び抜けた強さをもつ存在であることがシステム面でも再現されていたのは、シリーズファンとしては非常に嬉しかった点だ。

■食べ放題のバイキングさながらのコンテンツ量は過去最大のボリューム

またプレイして強く感じたのが、その圧倒的なコンテンツ量だ。

オープンワールド系のゲームをプレイする際、フィールドが広いだけで何も発見がなく、ほとんど移動するだけで時間を取られる……といった経験をしたことがある人は少なくないと思うが、本作は広さ以上にマップの密度がとにかく高い。

さまざまなサブイベント、パーティメンバーとのチャット、スジモンのレイドバトル、いいものサーチでのアイテム入手、フォトラリースポットなど、あまりにも膨大すぎる数のコンテンツが用意されており、少し歩けば必ず何かしらか発見がある。

個人的にすごいと感じたのが、サブイベントのバリエーションの幅がかなり広いこと。アイテムを言われた場所からもってきて渡す、いわゆる「お使いイベント」が少なく、一回きりのサブイベントのために作られたミニゲームが豊富にある。これまでもさまざまなミニゲームを作ってきた実績のある、ドラゴンエンジンだからこそ実現できたことでもあり、これ以上ないほどに贅沢な作りがされている。

プレイスポットもかなり充実しており、トロリーでハワイを回りながら不審者を撮影する「不審者スナップ」、アクロバットなドライブテクニックで料理を配達する「クレイジーデリバリー」、ゲームセンターでプレイ可能な「スパイクアウト」を始めとするセガの歴代名作ゲーム、定番の将棋やダーツなど、初登場からお馴染みのものまでラインナップが豊富だ。

「クレイジーデリバリー」は、「クレイジータクシー」好きのセガファンには絶対に遊んでほしいプレイスポット。

あまりにも要素が多すぎて、一度のレビューでは到底紹介しきるのは不可能なレベル。ハワイのフィールドの大きさも「7」の異人町を遥かに凌駕しており、実装されているコンテンツの量は間違いなく「龍が如く」シリーズ最大と言える。

本作から新たに移動手段である「OKAサーファー」は、充電にお金は掛かるものの、ファストトラベルを使わず広大なフィールドを移動したい時に重宝する。

そんな膨大なサブコンテンツの中でも規模が大きいのが、ドンドコ島とスジモンバトルという2つのプレイスポットだ。

先に解放されるのがスジモンバトルで、こちらは「7」にも存在していたスジモン図鑑を、単体のコンテンツとして遊べるようにパワーアップさせたもの。各地にいるスジモンをスカウトして仲間にして3対3のスジモンバトルで勝ち上がり、自身のランクを上げ、より強いライバル達に挑んでいく。

ハワイの各地にはスジモンバトルを挑めるライバルや、野生のスジモンを仲間にできるレイドバトルも発生する。

3対3で行われるこのスジモンバトル自体も、ルールはシンプルながらなかなか戦略性が高い。

3体のスジモンが同時にフィールドに存在するのだが、中央にいるスジモンは3体同時、左右のスジモンは正面と左右どちらかの対象を同時に攻撃できる。当然、攻撃力の高い主力スジモンを真ん中に置きたいが、真ん中のスジモンは相手がどんな動きをしようと必ずダメージを受けるので倒されやすいリスクがある。属性の有利不利もあり、属性不利な相手には一瞬で倒されるので、相手の手持ちスジモンの属性も意識しながら自分の布陣を考えていく必要がある。

一方のドンドコ島は、寂れきった島を再びリゾート地にすることを目的とするプレイスポット。今回筆者はドンドコ島をメインにプレイしたのだが、10時間近くはプレイしたにも関わらず、進行度としてはまだまだ中盤といったところで、おそらくは過去の「龍が如く」のプレイスポットの中でも最大級のボリュームを誇る。

島の中にある木や石などさまざまな素材を使って建物や道具を作り、島を発展させていけばより多くの観光客を呼べるようになる。観光客が使う施設は、公道に隣接しないと利用されないので、ある程度人の導線も考えながら施設を配置していく必要もある(そこまで複雑なものではないが)。

ドンドコ島をゴミの廃棄場にしようとしている業者が襲撃をしかけてくることもあり、その際は本編とコマンドとはまったく別のアクション方式のバトルが発生する。戦闘中には、ドンドコ島の素材から作れるおみやげで体力を回復することも可能だ。

ある程度島が発展すると、スジモンたちを働かせて、島の発展に必要な素材集めをさせられる「ドンドコファーム」も利用できるようになる。ドンドコファームでは、トレーニングをして控えのスジモンのレベルを上げることもできるので、スジモンを揃えれば揃えるほどドンドコ島の攻略が楽になり、ドンドコ島を発展させるほどスジモンも鍛えやすくなるという関係になっている。

ドンドコ島は稼いだ島内の専用通貨であるゼニーはドルに変換することができ、ある程度進めるとかなりのお金を稼げるようになる。本編の攻略を楽にするためにドンドコ島を発展させたくなり、ドンドコ島を発展させるためにはスジモンを集めたくなるという、本編を含めて2つのプレイスポットが相互的なゲームサイクルを形成しているのが非常によく出来ている。

よく「龍が如く」シリーズの魅力を例える時、1本でいろんなゲームを味わえる、幕の内弁当的な表現がされることがあるが、本作はもうそんなレベルではない。1品1品がお腹いっぱいになれるコース料理か、食べ放題のバイキングとでも言うべき詰め込みっぷりだ。こんな規模のゲームは、今後も早々お目にかかることはできないだろう。

決して量だけではなく、とにかくゲームプレイ、とくにバトル部分の完成度が高いので、本作からシリーズ初プレイでも十分楽しめるのは間違いない。一方、ストーリーは「7」との繋がりが強くので、ストーリーも含めて本作を余すこと余すことなく楽しみたい場合は、「7」だけでもプレイしておくことをオススメする。

その場合、「8」にたどり着く前にかなりの時間がかかってはしまうのだが、本作はそれだけの時間を割いてもプレイする価値があると断言できる(桐生一馬の物語を知る意味で、「7外伝」もプレイしておくとさらに万全)。それほど完成度が高く、凄まじい作品を生み出そうという開発チームの執念じみた情熱を感じられた。

コマンドバトルに移行してから、わずか2作目でこんな作品を作ってしまうのだから「龍が如く」シリーズは凄い。シリーズファンかどうかに関わらず、ゲーム好きであれば「7」を含めて絶対にプレイして欲しい。

(C)SEGA


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