業績不振のため冬のボーナスがありませんでした。天引きされるはずだった社会保険料はどうなるのですか?

冬のボーナスの支給状況は?

冬のボーナスを受け取れた人は、どれくらいいるのでしょうか。採用業務クラウド「採用係長」を提供する株式会社ネットオン(大阪市)が、2023年11月に人事・労務担当者284人を対象とした、「2023年度 中小企業の冬季賞与の支給に関する実態調査」によると、2023年の冬のボーナスにおいて、「支給する」と回答した中小企業は53.9%にとどまりました。また、支給すると答えた企業のなかで、減額を予定すると回答した企業は10.5%です。

冬のボーナスを減額する理由としては、業績の向上(回復)が見込まれていないためと回答する企業がもっとも多く、68.8%となりました。支給額は基本給の1ヶ月未満がもっとも多く、ついで1ヶ月以上1.5ヶ月未満が続きます。

この結果から、業績不振などによって冬のボーナスが支給されない、または支給額が減っている中小企業が多いと分かりました。

ボーナスから天引きされる社会保険料は?

ボーナスからは、社会保険料や税金が引かれます。給与所得者の場合、ボーナスから天引きして、勤め先が社会保険料や税金を納めます。

ボーナスから天引きされる、社会保険料の内訳を見ていきましょう。天引きされるのは、主に以下の4点です。

__●健康保険料
●厚生年金保険料
●介護保険料
●雇用保険料__

また、上記の社会保険料のほかに所得税も引かれます。なお、ボーナスから住民税は引かれません。

ボーナスが支払われなかった際の社会保険料

業績不振などの理由で冬のボーナスがない場合、天引きされるはずだった社会保険料はどうなるかというと、原則的に天引きされません。天引きされるのは、ボーナスが支払われたときです。

ただし、役員のボーナスは違います。ボーナスの支払い確定日から1年が経過した段階で支払いがされていなかった場合は、1年を経過した日に支払いがあったとみなされて、天引きされます。また、ボーナス等の一部のみ支払われた場合は、実際に支給予定だった金額に対応する部分において所得税と復興特別所得税が天引きされます。

社会保険料の天引きがなくなることで考えられるデメリットとして、将来受け取れる厚生年金の受給額が減る点が挙げられます。厚生年金の年金額は、「定額部分+報酬比例部分+加給年金額」で算出されるからです。報酬比例部分は、給与や賞与の額によって変わります。ボーナスがなければ社会保険料は天引きされないものの、将来の年金額に影響が出るおそれがあります。

ボーナスに社会保険料がかからないケース

基本的に、ボーナスが支給される際には、所得税と社会保険料が天引きされます。しかし、以下の2点のケースでは、雇用保険料をのぞく社会保険料は天引きされません。

__●月の半ばで退職した
●産前産後・育休による社会保険料支払い免除__

退職日が15日など月の半ばである場合、月末には会社に属していないことになり、社会保険料はかかりません。また、産前産後・育休で休んでいる場合は、産前産後休業保険料免除・育休休業保険料免除といった制度により、社会保険料の支払いは免除となります。

なお、上記2点のケースであっても所得税はかかる点に注意しましょう。

冬のボーナスがない場合は将来に備えよう

業績不振などの理由により、ボーナスが支給されない企業もあります。ボーナスがない場合は、社会保険料や所得税は天引きされません。また、月半ばの退職や産前産後・育休による免除期間であれば、社会保険料は天引きされません。

しかし、厚生年金保険料も少なくなるため、将来受け取れる年金額に影響が出る可能性もあります。ボーナスがないことへの影響を確認して、将来の老後資金などの準備をしておきましょう。

出典

株式会社ネットオン 2023年度 中小企業の冬季賞与の支給に関する実態調査
国税庁 No.1130 社会保険料控除
国税庁 No.2526 給与が一部未払の場合の源泉徴収
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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