[社説]うるま 陸自訓練場 新設計画 直ちに撤回を

 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新設する計画に対し、地元の「反対」が広がっている。

 周辺には、住宅地や県立石川青少年の家などがあり、跡地を抱える旭区自治会をはじめ、港区、松島区、東山区、美原区の評議委員会が相次いで反対を決議した。

 旧石川市の15自治会でつくる石川地区自治会長会でも計画に反対することで一致した。今後「反対の動きをうるま市全体に広げたい」とする。

 防衛省は地域住民がこれだけ強く反対していることを重く受け止めるべきだ。

 防衛省の計画では、沖縄セルラースタジアム那覇の敷地面積の7.6倍超に当たる約20ヘクタールの跡地を来年度に取得。ヘリの離着陸、ミサイル部隊の展開、空包射撃、夜間戦闘などの訓練が予定される。

 この問題は、沖縄でものすごいスピードで進む米軍と自衛隊の一体化、「台湾有事」を想定した南西諸島の軍事化の流れで捉える必要がある。

 国土面積の0.6%しかない沖縄に国内の米軍専用施設の70.3%が集中するだけでなく、次々と自衛隊の基地が造られている。人口の約9割が暮らす沖縄本島に限れば、米軍基地は約15%を占める。

 沖縄の地図を広げると、北から北部訓練場、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンと広大な基地が続く。

 陸自が計画する訓練場はハンセンからそう遠くない恩納村寄りの民間地域だ。うるま市には津堅島訓練場水域やホワイトビーチなどもある。

 本島の背骨部分は軍事演習場だらけだ。安全保障の負担が集中している。

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 防衛省はゴルフ場跡地への訓練場の新設について、沖縄の陸自部隊の強化に不可欠と主張する。一方、地元住民は「自然環境も、交通アクセスも良い最高の住宅地。住民が暮らす平和な場所に訓練場はいらない」と訴えている。

 石川は保守地盤とされ、自衛隊にも比較的理解がある地域だが、新たな負担に強い懸念を示すのは当然だ。

 隣接する県立石川青少年の家は1975年の開所以来、子どもたちの宿泊体験や環境学習の場として活用されている。小学生を中心に年間4万人以上が訪れ、キャンプファイアやナイトウオークラリーなどを楽しんでいる。県の天然記念物で絶滅危惧種の「イボイモリ」なども生息している。

 子どもたちが自然に触れて成長する場所の目と鼻の先に、騒音や振動を伴う訓練場を造る必要性があるのか。

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 防衛省の居丈高な態度も目に付く。

 木原稔防衛相は1月16日の会見で「計画を見直す考えはない」と突っぱねた。旭区が沖縄防衛局に計画撤回を求めた際、対応した担当者は「白紙に戻すことはない」と答えた。

 防衛省は当初開かないと言っていた住民説明会を11日に開くが、一部の周辺住民が対象のため、地元からは石川地域全体を対象にするべきだと反発の声が上がっている。

 地元の声に耳を傾けず、有無も言わさず強行する計画は、直ちに撤回すべきだ。

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