2年目の吉井ロッテで激化する内野手サバイバル 守備位置も背番号も大シャッフル、「7」藤岡裕大と「4」友杉篤輝の新コンビに期待

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2年目の吉井ロッテ、内野陣に変革の予感

「自分たちを超えてゆく。」──。キャンプインを目前に控えた1月31日、ロッテが12球団の大トリとして発表した2024年のチームスローガンである。

吉井理人監督の就任初年度となった昨季はシーズン最終戦までもつれ込んだAクラス争いを勝ち抜き、2位でフィニッシュしてポストシーズンへ。クライマックスシリーズ・ファーストステージではソフトバンクとの激闘を制して大阪へ乗り込んだが、王者・オリックスの壁は強大だった。

直近4シーズンで3度目の2位。気が付けば19年リーグ優勝から遠ざかり、近年はお家芸の“下剋上”も叶っていない。そこで吉井監督が掲げたのが「自分たちを超えてゆく。」だった。

何かを変えなければ上には行けない。指揮官はCS敗退直後の秋から変革に着手する。中でも大きな注目を集めたのが、内野陣の“シャッフル”案である。

秋季練習でのこと。遊撃手としてチーム最多の88試合に出場した藤岡裕大が二塁を守り、二塁手としてベストナインやゴールデングラブ賞の受賞歴もある中村奨吾が三塁へ、100試合以上に三塁手として出場していた安田尚憲が一塁へ回るというシーンがあった。本当にコンバートが実現するかは定かではないが、この春のキャンプでは内野全ポジションで激しい競争が繰り広げられることになりそうだ。

背番号「7」でチームの顔へ

なかでも藤岡裕大は今オフに背番号「7」への変更が発表されたことでも大きな注目を浴びた。

ロッテの「7」と言えば、西岡剛や鈴木大地といったチームの顔とも言える内野手が背負ってきた伝統ある背番号。「歴代の先輩方がつけられていた素晴らしい番号をいただくことになり光栄です。少しでも皆さまに追いつくことができるように来シーズン、一生懸命頑張ります」と気を引き締めた。

昨季は93試合の出場で打率.277、1本塁打で22打点という成績。それ以上に大きなインパクトを残したのが、CSファーストステージ第3戦だ。勝てばファイナル進出、負ければシーズン終了の大一番。9回まで両チーム無得点という緊迫した試合は延長10回表に3点を奪われる苦しい展開の中、諦めないロッテは先頭の角中勝也が粘りに粘ってセンターへの安打を放つと、続く荻野貴司はボテボテのゴロも打球の弱さが幸いして内野安打に。ベテランが執念でつないで作った無死一・二塁のチャンスで、藤岡は初球から勝負をかけた。

津森宥紀が投じた148キロを迷いなく振り抜くと、打球は右中間スタンドに突き刺さる起死回生の3ラン。土壇場で試合を振り出しに戻すと、押せ押せムードのままチャンスを作り、最後は安田尚憲がサヨナラの適時打。劇的な大逆転勝利でファーストステージ突破を決めた。

規定打席には届かなかったものの、打率.277と出塁率.389はこれまでのキャリアの中で最高の数字だ。30歳のシーズンにして守備・走塁だけでなく打撃でも存在感を発揮しただけに、「素晴らしい番号」を受け継いだ今季さらなる飛躍に期待がかかる。そして、それが叶った時にどのポジションを守っているのか。長いシーズンを見守る中での楽しみのひとつとなりそうだ。

ライバルの背番号を受け継ぎレギュラー奪取を

その藤岡が入団時から背負ってきた「4」を受け継いだのが、大卒2年目の友杉篤輝である。

昨季はルーキーイヤーながら開幕一軍メンバー入りを果たして64試合に出場。持ち味の守備力を武器に藤岡とポジション争いを演じた。迎えたはじめてのオフ、舞い込んできたのがライバルの二塁転向の話題と背番号変更。さらに自身が藤岡の「4」を引き継ぐことが発表されたのは、藤岡の背番号変更が発表されてからわずか2日後のことだった。

「今年まで(藤岡)裕大さんがつけていた番号を来シーズンから自分がつけるということに関しては驚いています」と率直な感想を吐露しつつも、「背番号4は友杉と言われるようにこれから自分の番号にしていきたいと思います!新しい友杉を応援よろしくお願いします」と前向きに意気込んだ23歳。藤岡との“背番号変更コンビ”で不動の二遊間を形成することができれば、もともと守備力に定評のある2人だけに、チームの戦いぶりにも安定感が増してくることだろう。

さらに友杉が1年間背負った「10」は、ドラフト1位ルーキー・上田希由翔に受け継がれることとなる。上田は昨年も明治大の主将として同じ背番号で戦っており、慣れ親しんだ背番号でプロのキャリアをスタートすることとなった。勝負強い打撃で六大学歴代4位に相当する通算74打点を挙げた強打者だが、メインポジションである三塁には中村や安田といった高く分厚い壁が待ち受けている。1年目から「80安打・50打点」を掲げる男の挑戦もこの春の見どころのひとつとなりそうだ。

守備位置も背番号も大幅にシャッフルされた全く新しい陣容が、2年目の吉井ロッテの目玉となるのか。3月29日の開幕戦を目指す、長いようで短い争いから目が離せない。



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