新大関・琴ノ若 相撲漬けから解放される「15分のリラックス時間」

大関に昇進した琴ノ若(左)と、 師匠の佐渡ケ獄親方(写真:共同通信)

1月31日、日本相撲協会は臨時理事会を開き、初場所で13勝をあげた琴ノ若(26、佐渡ケ嶽)の大関昇進を満場一致で決定、大関昇進の伝達式が行われた。琴ノ若は口上で「大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って相撲道に精進して参ります」と決意を新たにしてみせた。

琴ノ若は、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から受け継いだ現在のしこ名で新大関として春場所を迎える。その後、夏場所からは母方の祖父で、第53代横綱だった先代師匠のしこ名「琴櫻」を襲名する意向であることを明かした。

新大関・琴ノ若の相撲の原点は、祖父・琴櫻の“英才教育”にあるという。相撲リポーターの横野レイコさんが語る。

「孫の将且くん(新大関・琴ノ若)が生まれたとき、琴櫻さんは大喜びで、小さいころからいろいろなところへ連れ回していたんです。銭湯にも一緒に行っていて、まわりの人に『この子は大きくなったら力士になるので、関取になったら応援してやってください』と話していたそうです。おふろでおじいちゃんが長話をするせいで、将且くんがのぼせてしまうこともしばしばあったとか(笑)」

祖父も父も土俵を沸かせた人気力士で、生まれた家は相撲部屋。自然な流れで、琴ノ若は2歳になったころには「まわしを締めたい!」と自分から言い出したという。幼いころは祖父の横で正座をして稽古を見るのが大好きだった。小学生のときに本格的に相撲を始め、中学、高校は相撲の強豪として知られる埼玉栄で経験を積んだ。

「高校卒業後、佐渡ケ獄部屋に入門する際は、母・真千子さんから『実家だからと生半可な気持ちでいてはダメ。もう帰る家はないんだと思うくらいの強い気持ちで』、と言われたそうです」(横野さん、以下同)

覚悟を決めての入門、父と母は師匠とおかみさんとなり、厳しい稽古に耐え、怪我を乗り越えて着実に力をつけてきた。

「いまでは部屋を引っ張っていく存在です。若い衆を連れて食事に出かけたりもするのですが、『今日は相撲の話はいっさいしないでおこう』と自分で宣言していたのに、5分もしないうちに相撲の話を始めちゃうくらい、新大関は相撲が大好き(笑)。相撲以外に集中している数少ない時間は、大好きな朝ドラを見ている15分だけのようですね」

相撲の取り口では、優しい性格がゆえの“甘さ”が垣間見えることもあったが、最近はその不安も解消されてきたという。

「以前に宮城野親方(元横綱白鵬)からも『優しすぎるからもっと“鬼”になれ、最後まで厳しくいけ』とアドバイスをもらったそうで、この1年で相撲にも厳しさが増してきたように思います。ますます期待が高まりますね」

父がはたせなかった大関昇進を成し遂げ、次に目指すのは祖父に並ぶ最高位。「琴ノ若」として挑む最後の本場所は、3月10日に初日を迎える。

© 株式会社光文社