鬼にも優しい時代が、やって来たのかもしれない。
節分直前の2024年2月1日、京都府福知山市が"鬼とヒトが仲良くなれる豆のお菓子"の完成を発表した。
その名も「おにさんこちら」。福知山市はプレスリリースで、このお菓子について次のように説明している。
鬼を親しむ新・節分カルチャーを全国へ届けるために、市民や鬼に詳しい人々とともに開発したオリジナル新商品
本商品の開発にあたり、より"オニバーサル"な商品を目指し、企画会議「ONIversal summit」を開催しました。会議では"鬼"の気持ちを考えながら「どんな見た目なら鬼が怖がらないか」「ヒトにとってもどうしたら鬼に投げるのももったいないくらいおいしいお菓子にできるか」話し合いを重ねました。
鬼に詳しい人々とともに開発? オニバーサル?? 鬼の気持ちを考えながら会議???
福知山市は、何を言っているのか。Jタウンネット記者は1日、市役所への取材を試みた。
この街ではもともと......
「"鬼のまち"として、豆を投げずに分け合う、新しい節分文化を広めたかったからです」
取材に応じたのは秘書広報課。商品を作った目的を尋ねると、そう答えた。
実は福知山市は鬼の聖地・大江山などがある、"鬼のまち"。
鬼と言えば恐ろしい存在だが、この街では違う。恐れるのではなく「親しむ」という、少し変わった文化が根付いている。
例えば、全国で鬼たちが豆を投げつけられる2月3日の前日――つまり、2月2日は福知山市では「鬼鬼の日」と名付けられている。そして、「節分で追い出される鬼たちよ、集まれ!」と鬼を悪者にしない独自の節分カルチャーを発信してきた。
そんな福知山市で2023年に始まったのが、"オニバーサル" なまちを目指すプロジェクト『ONIversal city project』。ユニバーサルという単語をもじり、「鬼もヒトもみんなでワクワク、楽しみながらまちを盛り上げていく」ことを意味しているそうだ。
プロジェクトの一環で、9月20日と10月23日には「鬼とヒトが仲良くなれる豆のお菓子」を開発する会議「ONIversal summit」が開催された。
これには世界中の鬼研究者や鬼好き約300人が加盟する団体「世界鬼学会」のメンバーなど、鬼に詳しい人や地域住民が参加したという。
「サミット参加者は、皆さん元々鬼への理解が深い方々ですが、さらに鬼のツノのカチューシャや鬼柄のジャケット、鬼のお面など、見た目も鬼になりきりました」(福知山市役所 市長公室 秘書広報課)
「だったらこんにゃくはどうか」!?
会議のテーマは、「どんな見た目なら鬼が怖がらないか」「ヒトにとってもどうしたら鬼に投げるのももったいないくらいおいしいお菓子にできるか」。途中で迷走することもあった。例えば、こんな流れが生まれたことも......。
鬼もヒトも大人も子供も、みんながおいしいと思えるものが良い。
↓
そうすると辛いのではなく、甘いお菓子の方が良いか。でも金平糖のようにトゲトゲしたものではなくて、丸い形状の方が、鬼が恐がらないのではないか。
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たとえヒトが鬼に投げたとしても、おいしそうだからキャッチして食べてしまうような見た目がいいのではないか。
↓
やわらかくて当たっても痛くないものにしたい。
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だったらこんにゃくはどうか。
秘書広報課はこの時のことを「振り返ると、この時は迷走タイムに入っていたのかもしれません...」と述べていた。
そんな迷走を乗り越え、生まれたのが豆のお菓子 『おにさんこちら』。
「鬼もヒトも青春を思い出す甘酸っぱいカシス味」「鬼の子どももヒトの子どももみんな大好きカカオ味」「鬼もヒトもウルウルキラキラ爽やか~になるレモン味」「鬼と一緒に団らん煎茶味」の4つの味の、丸い粒。クラッシュしたロースト大豆を練り込んだ、一口サイズのさくっほろっとした食感の豆クッキーに仕上がったという。
ウルウルキラキラ爽やか~など、独特な味の表現が気になったが......どれも鬼と人間がおいしく食べることができる味とのこと。前出の「世界鬼学会」の八木透会長(佛教大学歴史学部教授)も、「鬼も喜んで食べてくれるような美味しい豆」とお墨付きを与えている。
そんな豆のお菓子「おにさんこちら」は、1日から販売を開始した。福知山市内の「セレクトショップ 鬼の巣<ONI-NORTH>」「福知山鉄道館フクレル ミュージアムショップ」「大江駅売店」、大江作業所 公式オンラインサイト(BASE内)で購入可能。
価格は750円(税込)。