あいまいな旅行記 美しいものを見て今年を締めくくりたくて、川越

秋口だったか、なにか美しいものを見て今年を締めくくりたいと思って12月30日の「ウクライナ国立バレエ」の「雪の女王」川越公演のチケットを買った。東京公演が多くあったけど、どれもオーケストラピットの生演奏付きで、料金が少し高かった。生演奏じゃなくてもいいんじゃないか、それにオーケストラピットがない分、ステージが近いんじゃないかと川越公演にした。

16時開演だから、久しぶりに川越を観光したり、その前に西武線の東村山駅で途中下車して、志村けんの銅像を見てから行こう。2020年の春、志村けんの急逝はショックだった。あの頃はコロナで、多くの人がお見舞いも見送りもなく、普通の死を迎えられなかった。

ほぼご近所、志村けんがいてくれてよかった

5歳から30年ほど東京の武蔵村山市に住んでいたから、東村山音頭がブレイクしてからは、武蔵村山市に住んでいると伝えると、東村山ですかと聞き直されることが多かった。「8時だよ全員集合」はいつも見ていた。加藤茶と荒井注が好きで、学校の教室で「ちょっとだけよ」と踊ったし、「なんだバカやろう」と口真似した。

志村けんが新メンバーに入って、東村山音頭、カラスの勝手でしょ、ヒゲダンスとヒットを連発して、全員集合が終わって、大人になってからも、今でもずっと笑わせてもらっている。この数日は柄本明が、志村おばあちゃんからアダルトビデオを借りるコントをユーチューブで見て、毎回笑っている。

「感動をありがとう。」もなぁ

志村けんの銅像は駅前ロータリーの一角にあった。画像では見ていて、イマイチだと思っていて、実際に見ても残念な感じだった。台座の上で、羽織袴の正装でアイーンのポーズなんだけど、どこかの武士の銅像に見えた。なんでこのデザインなのか調べたら、相談を受けた親族が羽織袴で三味線を弾いている姿がかっこよかったからだそう。そういえば三味線でスカパラと競演していたっけ。

20代のハッピ姿で若々しい志村けんが東村山音頭で両手を広げているポーズや、バカ殿や変なおじさんがよかった。台座が高いのも残念だった。もっと低い場所に立っていれば、若い志村けんやバカ殿や変なおじさんと肩を組んで写真が撮れたのに。そしたらきっと順番待ちの行列ができていた。まあいいや、銅像は銅像だ。

2023年12月30日、川越は多くの人で賑わっていた

たくさんの人

川越観光には期待していなかった。以前行ったときにザ・観光地という印象だった。街道に連なる蔵造りの古い建物群は、昼間は賑わっていても、観光客が帰った午後6時には全部閉店してしまい驚いた。地元の人たちが利用する店じゃないんだとがっかりした。今回は夜までいなかったから、夜はどうなのか分からない。

江戸時代、川越から江戸へは新河岸川や川越街道で農産物が運ばれ、江戸からは文化や芸能が川越に伝えられ、川越の観光キャッチフレーズは「小江戸」だ。明治以降に整備された蔵造りの街並みが残っていて、人気を集めている。

鯉三姉妹は撮っちゃうよね

「時の鐘」周辺も、蔵造りの建物が連なる街道も多くの人で賑わっていた。行列のできている、なにかの商店やレストランが何軒もあった。なにかを立ち食い、歩き食いしている人も多かった。路地に入り、店頭で味噌こんにゃくを売っている、並んでいる人がいない店で、豚汁うどんを食べた。根菜がたくさん入っていておいしかった。

店の女性は青果店の前掛けをしていて、尋ねると以前は店の向かいで青果店をしていて、今は当時の倉庫を利用して、お店を始めてみたんだそう。物持ちがいいのか、店主がコレクターだったのか、古いブリキ製の看板や古い事務用品が店内に飾ってある。鴨居には若いモンローとジェームズ・ディーンとオードリーの写真が飾ってある。ジェームズ・ディーンがモンローを見つめているような位置に置かれているのがいいですね、と店の女性に話しかけると、ほんとうだと、意図していなかったよう。

ここでカフェオレをテイクアウトした

お菓子横丁の近くのテイクアウトのコーヒー屋でカフェオレを買った。店内にたくさんのカップが並べてあって、あれで飲めるのかと思ったら、紙カップでサーブされて少し残念だった。店の隣の空き地に置かれた店のテーブルで、カフェオレを飲んだ。12月30日の屋外だったけど、それほど寒くはなく、行きかう人を眺めて楽しかった。

歓喜のカーテンコール、ずっと続いてほしかった

もうすることもなくて、30分ほど歩いてバレエの会場に着いた。前方の席を予約したのは覚えていたけど、改めてチケットを見ると前から2列目で、とてもステージに近くて驚いた。1人で見に来ている人も普通にいて、隣は年配のおじさんで、斜め前の最前列の女性は鑑賞中、いいタイミングで「ブラボー」と盛んに声をかけていて、慣れている感じだった。

2列目は、バレリーナがジャンプしたあとステージに着地する音や演出で手にキスをする音まで聞こえた。主役が踊っているステージ脇でただ立っているだけに見えるバレリーナたちも、みんな細かく演技をしているのも分かった。どこまで演出されているのか分からないけど、ステージ上ではすべてのバレリーナが少ない動きであっても絶え間なく演技しているんだ。

2部構成の幕間の20分、公共の施設だからかロビーエリアに飲み物を売っていなかった。バレエ公演だと幕間でワインで談笑したりするものだと思っていたけど違うんだ。仕方なく急いで同じ建物のスーパーで小さなワインボトルを買って飲み干して、盛り上がる準備をした。第二部でも斜め前の女性のブラボーを聞きながらステージの端から端まで眺めて過ごした。楽しい公演だった。

カーテンコールよいつまでも

カーテンコールは撮影がOKだった。ぶれてしまうけど写真や動画を撮るのに、前列2列目のメリットは大きい。カーテンコールはとても盛り上がった。気が付くとブラボー姉さんは誰かの名前を描いたボードを掲げている。出演者は何度もステージの後方から前方へと繰り返し拍手に応えた。やがてブラボー姉さんが立ち上がって、それに倣った。会場を振り返ると、もう、全員が立ち上がって拍手と歓声をあげていた。こんなに盛り上がっていたんだ。

出演者も顔を見合わせながら、いつまでも続くカーテンコールに楽しそうだった。やがて緞帳が下りると、緞帳の向こうで出演者が声をかけあうのが聞こえた。美しいもの見せていただきました。それで、1月2日に東京フォーラムのドン・キホーテも見にいってしまった。雪の女王の方がすごくよかった。カーテンコールもお約束な感じで、川越公演にはまったく及ばなかった。ウクライナ国立バレエは毎年日本に来ているようで、来年の川越公演は最前列で見るぞ。

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