「全国の味を忠実に再現」GOサイン出るまで試作何度も…通信販売でラーメン店の救世主に!倒産は過去最多…背景には「1,000円の壁」

国民食ともいわれるラーメンですが、2023年1年間のラーメン店の倒産件数は過去最多を記録しました。そんな中、静岡県内の工場が業界の“救世主”になるかも、と注目を集めています。

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浜松市中央区の「揚子菜館」。創業60年の老舗中華料理店はどの料理も安くて美味しいと評判です。人気は、自家製麺を使った昔ながらのラーメン。1杯550円です。

<浜松総局 野田栞里記者>
「コシのある麺にスープが絡んでたまらないですね。ホッとする味です」

浜松市民から愛され続ける老舗店も最近の状況には頭を悩ませています。

<揚子菜館3代目店主 周淳史さん>
「材料費や人件費がかなり上がって来たのが大きい。やっぱり一番顕著なのが油ですね。一斗缶の油が2倍とまではいかないけれど、1.5倍は上がったかなと思います」

材料費などの高騰に加えて、新型コロナが5類に引き下げられても客単価が大きく増す事はなく、収入は2割近く減少。2023年9月、やむなくほぼすべてのメニューを50円値上げしました。

<揚子菜館3代目店主 周淳史さん>
「ひとつ一つは小さくても全部が上がってきていて圧迫する。値上げに対して抵抗感はありましたね」

東京商工リサーチによりますと、2023年1年間の全国のラーメン店の倒産や休廃業などは74件。過去最多を更新しました。こうした背景には、ラーメンに対する『1,000円の壁』があると言います。

<揚子菜館3代目店主 周淳史さん>
「小さいころから食べてきた習慣みたいなのがあって、1,000円、ケタが一個多くなることに関して抵抗感があるんじゃないかなと思いますね。提供する側も感じていて、なかなか(値上げに)踏みきれない」

そんな中、静岡県内の工場が業界の“救世主”になるかもと注目を集めています。会員数50万人のラーメン通販サイト「宅麺.com」が運営する浜松市の工場です。

<宅麺クラウドキッチン 高田成人工場長>
「こちらでは『宅麺』が取り扱っている全国のラーメンの一部、それを忠実に再現している工場になります」

契約を結んだ店に代わってラーメンをつくり、通販サイトなどを通じて販売します。店主からレシピを聞き取り、GOサインが出るまで試作を繰り返して、「店の味」を再現します。できあがった麺や具材は、マイナス28℃の冷凍庫などで一気に冷やし、味を損なわないようにします。

この事業は「宅麺.com」がラーメン店とライセンス契約を結び、毎月、販売額に応じたライセンス料を店に支払う仕組み。ラーメン店の新たな収入源として期待されています。

<宅麺.com 野間口兼一代表>
「『宅麺』で販売することで日本全国のお客様に販売できるので、実際に店に来られないお客さまもターゲットになるという意味では、ラーメン店の力になれたら」

どんな形でお客さんに「店の味」を知ってもらうか。そして、生き残っていくのか。国民食「ラーメン」をめぐる生存競争は形を変えながら激しさを増しています。

静岡経済研究所の清亮介研究員によりますと「コロナ禍に発達し、消費者にも浸透したデリバリーでの販売や冷凍食品の展開を活用することが生き残りのポイントになっている」ということです。デリバリーや通販は新しい固定ファンの獲得にもつながり、めぐりめぐって来店数の増加も見込める可能性があります。

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