ごみの量を数値化して川の「ごみ予報」が可能に 日本発の最新技術で世界の海洋ごみ問題を解決

川の清掃活動で出てきた多くのごみ

海洋プラスチックごみの問題が深刻化しています。海洋ごみの7、8割は街から発生し、雨が降った際などに、ごみが川や水路に流出し海へ至ります。2050年には魚より海洋ごみの量が多くなると言われていて、国や企業だけでなく、1人1人のごみを減らす意識と行動が、海の未来を守ることに繋がります。

そんな海洋ごみの問題を解決するため注力している団体や企業の取り組みを取材、全3回に渡ってお届けします。今回は、ごみの輸送量を数値化する最新技術「RIAD(リアド)」を使ったごみ削減のための有効活用法を紹介します。

橋の下に取り付けられた川ごみモニタリング機器

前回は大河ドラマ「どうする家康」で盛り上がった愛知県岡崎市で、岡崎城の西側を流れる「伊賀川」に設置された清掃活動に一躍買う最新システム「RIAD」を紹介しました。河川に浮遊したごみの輸送量を動画でモニタリングして解析できるシステムです。

我々の生活には欠かせないプラスチック。誕生したのは今から150年ほど前のこと。日本では1950年代に入ってからプラスチックの生産拡大が始まり、生産量は一気に増加していきました。生産量に比例して海洋プラスチックごみの問題が深刻化していきました。

ごみ問題とは無縁? 江戸の超循環型社会

岡崎城

かつて徳川家康が生きていた約400年前の江戸時代には、当然プラスチックはなく、日本にはプラスチックの原料である石油などの化石燃料はほとんどなく「鎖国」により外国との貿易を禁止していたため、プラスチックに頼らない生活をしていました。

江戸時代には「灰買(はいがい)」という業者が存在。多くの人々が木やワラを燃料として生活していたため、毎日大量に出る灰を集めて、灰を肥料として販売する業者へ売る「灰買」というリサイクルビジネスが成り立っていました。

その他にも「鋳掛屋(いかけや)」という穴の空いた鉄釡などを修理する商売もあり、下駄や桶、傘、眼鏡、煙管なんでも修理して使っていました。現代のような「ごみ問題」はなく、モノが不足していたため、ありとあらゆるモノを資源として再利用しなければならない時代でした。

まさに江戸時代はリユース社会。何でも使い回して無駄にすることなく使い切る感覚を持ち、世界に誇ることができる超リユース社会でした。

清掃活動を数値化! 将来はごみ予報も出来るツールに

川の清掃活動で出てきたごみの一部

しかし、数百年後「鎖国」制度も解かれて他国との貿易が始まり、1914年にはプラスチックは日本で作られ始め、1958年ごろには国の政策の後押しで本格的に大量生産されるようになりました。その後も、安価で利便性が高いため、我々の日用品にも多く使われるようになりました。

現在は技術が発達して便利な時代になった分、耐久消費財の頻繁な買い替え、過剰包装、使い捨て商品の増加、生活雑貨など安価に入手可能になった故にモノを大切にしなくなったことが原因でごみが増えています。ごみの中には多くのプラスチックも入っており、社会問題となっています。

伊賀川

そこで開発されたのが河川の浮遊ごみの輸送量をモニタリングするシステム「RIAD」。開発者の吉田さんに有効活用法を聞きました。

八千代エンジニヤリング株式会社 吉田拓司さん:
今回モニタリングしている岡崎市の伊賀川は清掃活動を頻繁に行っている河川です。「伊賀川を美しくする会」という50年間続いている会がある所があり、最新システムのRIADを使ってモニタリングをすることで、他の河川と比べて「伊賀川が綺麗だ」ということをしっかり数値で評価したいと考えています。

清掃活動を頑張っている方々に「これだけ効果が出ています」といったデータを提供することで、地域を活性化してより良いコミュニケーションが生まれたらいいなと考えています。

八千代エンジニヤリングの吉田拓司さん

河川の問題は世界中に繋がる話だと思います。今後は日本だけではなくて、海外に展開していろいろな河川でモニタリングしてデータを蓄積し、ごみが多い河川の原因に関してより深く検討できるような流れを目指したいです。

そうすれば、2040年に前倒しされた海洋プラスチックごみ削減の目標(=海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する目標)達成の助けになる可能性のある貴重なツールになるかと思います。

ただ、今は川にごみがどれくらい流れているかということを見たことがない人ばかりだと思うので、まずは解析して出たごみの量を知ってもらうこと、見てもらうことから始めたいです。ウェブページなどに結果を載せて、いろいろなご意見をいただけたらと思っています。

自然系ごみ+人工系ごみの時間変化のグラフ

――今後の展望はどのように考えていますか?

浮遊ごみのデータを整理すると、川に流れるごみの量と川の水量、または降水量との関係性が把握できる可能性があります。降水量との関係性が見えてきた場合、雨の予報だけで「どのくらいごみが流れるか」ごみの予報をすることができます。

一般の人が“ごみ予報”を見て「来週はたくさん雨が降ってごみが多く流れそうだから、
週末は清掃活動をしてみよう」とか、自然系ごみと人工系ごみの時間変化のグラフを見て「運動しながらごみ拾おう」とか、面白く楽しくかつ健康になりながら、川の景観もきれいになるというよう取り組みができるといいなと思い、活動を続けています。

全3回に渡り取材した海洋プラスチックごみ問題。岡崎の乙川という大きな川を舞台に、地道な清掃活動を定期的に続けながら多くの人たちで守り続けている団体や、市民の清掃活動を最新技術を駆使し安心・安全なシステムに変え、数値化して裏で支える企業の姿がありました。

今後はこれらの活動が大きなものになり、より住みやすい社会が作られる日も遠くないかもしれません。

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