“アレ”の蚊帳の外だった阪神・秋山拓巳、年俸半減、パレード不参加の屈辱晴らす15年目へ

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二軍で5度目の最多勝も一軍では未勝利

2023年に18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガース。“アレ”を達成した屋台骨は12球団屈指の投手陣だった。

しかし、その中に秋山拓巳の姿はなかった。2017年に12勝、2020年に11勝など3度の2桁勝利を挙げた実力派右腕は、昨季わずか2試合の登板で0勝1敗、防御率7.45と屈辱的な成績だった。

二軍では8勝を挙げてウエスタン・リーグで2年連続5度目の最多勝。プロで14年も飯を食ってきた秋山にとって、二軍のタイトルを素直に喜べるはずはないだろう。

抜群の制球力で2桁勝利3度

愛媛の名門・西条高で3年時に春夏連続で甲子園出場。身長188センチの剛腕の名は全国に轟き、打者としても高校通算48本塁打のパワーで「伊予ゴジラ」の異名を取った。

2009年ドラフト4位で阪神に入団。1年目の2010年にいきなり4勝を挙げたが、その後は鳴かず飛ばずの日々が続いた。

背番号27から46に変更した2017年、積み重ねた努力がようやく実を結び、12勝6敗、防御率2.99の好成績をマーク。飛躍の要因は、規定投球回数に達した投手の中で最少の16四球しか与えなかった抜群の制球力だった。

先発ローテーションの一角として2020年に11勝、2021年にも10勝をマーク。ストレートは140キロに届かなくても丁寧にコーナーに投げ分ける投球は芸術の域だった。

しかし、背番号21に変更した2022年は5試合登板でわずか1勝、2023年は未勝利…。オフの契約更改では推定年俸8800万円から4400万円に半減し、11月の優勝パレードにも参加できなかった。

今年でプロ15年目とはいえ、まだ32歳と老け込む年齢ではない。現に二軍では結果を残している。ほんの少しのきっかけで芸術的な投球が甦っても不思議ではない。

一軍で通算49勝、二軍では69勝

2023年のチーム防御率2.66は12球団トップ。言うまでもなく日本一の原動力は抜群の投手力だ。

MVPに輝いた村上頌樹、12勝を挙げた大竹耕太郎、左腕・伊藤将司の3人が2桁勝利、2021年から2年連続最多勝の青柳晃洋、通算118勝の西勇輝、切れの良いストレートとフォークが武器の才木浩人の3人が8勝を挙げた。

23歳の剛腕・西純矢や3年目の森木大智ら若手も虎視眈々とローテ入りを狙っており、簡単にはイスが空きそうにない。

リリーフ陣も昨季35セーブを挙げた岩崎優、24ホールドの岩貞祐太、加治屋蓮、桐敷拓馬、島本浩也に復活を期す湯浅京己もおり充実している。実績のある秋山でもチャンスが巡ってこないと割って入ることは難しいだろう。

秋山は通算49勝44敗と節目の50勝に王手をかけているが、ウエスタン・リーグでは通算69勝42敗と一軍以上の白星を挙げている。5度目の最多勝もうなずける数字とはいえ、一軍で白星を積み上げ二軍の勝利数を上回りたい。

「アレ」が流行語大賞になるなど話題をさらった阪神の中で、独り悔しさを押し殺して自らと向き合った秋山。野球人生を懸けた勝負の15年目が始まった。



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