『離婚しない男』『おっパン』『おっさんずラブ』深夜枠を活かした独自路線のドラマが話題

今期、深夜ドラマがその枠を活かして独自路線を発揮し注目を集めている。

まずは過激な内容とキャスティングが相まって話題騒然の『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(以下、『離婚しない男』/テレビ朝日系)。妻の不倫に気づかぬフリをしながらその証拠を日々収集し、娘の親権を獲得するために意思を持って今は“離婚しない”主人公・岡谷渉(伊藤淳史)、その妻・綾香(篠田麻里子)。さらに彼女の不倫相手は娘の心寧(磯村アメリ)がレッスンのために通う大手芸能事務所の統括マネージャー・マサト(小池徹平)で、2人は壁一枚隔てた隣の部屋で情事を重ねるという“昼ドラ”も驚きの展開が繰り広げられる。

マサトのドSっぷりや無茶振り、どんどんエスカレートしていく要求になんとか体当たりで応えようとする綾香の応酬、そして彼らの不倫現場の証拠を抑えようと必死な渉の葛藤など……濃度が高すぎてむせ返りそうになる人間模様の裏に、マサトから渉への異様な執着も垣間見え、過去に彼らにあったのだろう接点やこれからますます加速するだろう愛憎劇の行く末が気になる。

そこから一転、かなり純度の高いピュアラブが描かれるのが、人気シリーズの最新作『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)だ。結婚した春田(田中圭)と牧(林遣都)の新居に元・部長で牧にとっては元・恋敵の黒澤(吉田鋼太郎)が家政夫“武蔵さん”として加わるという、もはやここまで来れば“腐れ縁”とも言える強い絆が描かれる。誰かが誰かのことを大切に愛おしく想う気持ちがどれだけ大きなエネルギーになるか。時にその想い同士が衝突することもありながらも、それぞれが自分たちらしい結婚観や家族観を愚直に追い求める姿に、誰の幸せも諦めようとしない姿勢に胸が熱くなる。

また、春田と牧のお隣さんとして登場する和泉幸(井浦新)や六道菊之助(三浦翔平)など魅力的な新キャラクターたちも加わり、あったかく騒がしい彼らの日常から目が離せない。

同じく“おっさん”の冠がつく『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系)も、価値観や常識のアップデートに向き合う“おっさん”が主人公だ。世間の古い常識・偏見で凝り固まった沖田誠(原田泰造)はデリカシーのかけらもなく家庭内でも職場でも嫌われているが、引きこもり中の息子・翔(城桧吏)からはっきりと拒絶されたことをきっかけに今までの自分の信念を初めて疑問視し、変化していく。

偏見まみれのアラフィフ男性が、ひょんなことからできた二回り以上年下のゲイの友達とともに常識をアップデートしていく奮闘劇は、人は何歳からでも変われるし、誰だって間違うことはあって、間違えてしまった後の対応こそが大切だということを教えてくれる。息子の翔は学校で新たな居場所を獲得しつつあるが、何やら彼の世界をいい意味でも乱してくれそうな気になる人物の接近もあり、図らずしも親子揃って変化を促されている。沖田親子の変革を温かく見守りたい。

『離婚しない男』は、TVerにおける第1話の視聴回数が日曜劇場『VIVANT』(TBS系)を超えたことも話題になった。ドラマの人気を図る尺度として、視聴率だけでなく、見逃し配信の再生数も重要視されるようになった昨今。深い時間帯ならではの過激な描写や、ピンポイントな層に刺さるニッチな内容を扱った“深夜ドラマ”が、プライム帯のドラマを話題性で凌駕するケースも増えていくのかもしれない。

(文=佳香(かこ))

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