教育費と住宅ローンで限界です。実際に老後資金を2000万円貯めている世帯っているのでしょうか?

金融資産保有額が2000万円を超えている世帯は少ない

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」によると、教育費と住宅ローンの支払いを行っているであろう40~50代が保有する金融資産は図表1のとおりです。

【図表1】

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」より筆者作成

また、金融資産保有額が2000万円を超える人は、40歳代が全体の9.6%、50歳代が全体の12.9%と少なく、内訳は図表2のとおりです。

【図表2】

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」より筆者作成

50代会社員の約半数が老後資金として準備しているのは500万円未満

ベンチャーサポート相続税理士法人(東京都中央区)が、2023年8月に50代の会社員1004人を対象に実施した「老後資金と働き方の調査」では、老後資金として準備している金額を以下のように伝えています。

__●500万円未満:49\.3%
●500万円以上~1000万円未満:15.6%
●1000万円以上~2000万円未満:14.6%
●2000万円以上~3000万円未満:9.3%
●3000万円以上~5000万円未満:5.7%
●5000万円以上:5.5%__

約半数近くが老後資金として準備しているのは500万円未満、2000万円を超えると回答した調査対象者はゼロではないものの、全体の20%に満たない状況です。50代のうちに準備している老後資金が500万円未満の場合、2000万円を貯めるのは簡単ではありません。可能なかぎり早いタイミングから、2000万円を貯めるための方法を検討する必要があるでしょう。

満65歳時の預金額見込みが2000万円を超える人は約3割

株式会社ホロスプランニング(京都市)が、2022年6月に日本全国の男女500人を対象に実施した「老後2,000万円問題アンケート」にて、2000万円以上と答えたのは500人のうち31.6%、続いて多かったのは1000~1200万円の19.4%です。65歳までに2000万円を超える老後資金を用意するのは難しいと考える人が多く、中には300万円未満(8.6%)と回答する人も見られました。

老後資金2000万円を貯める方法

老後資金として2000万円を貯めることを目標にするのならば、以下のなかから適切な方法を検討してみてください。

__●積立定期預金
●iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA
●個人年金保険__

教育費や住宅ローンの支払いで、2000万円を貯める余裕がない人もいることでしょう。しかし、60歳代以降になると定年退職などを理由に、40歳代や50歳代と比べて年収が減る可能性が高いです。そこで、年収の高い40歳代や50歳代のうちに可能なかぎりお金を貯めておいたほうが、老後資金に対する安心感は高まるでしょう。

なお、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」によると、40歳代と50歳代、60歳代の給与所得者1人当たりの平均給与は図表3のとおりです。

【図表3】

国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」より筆者作成

積立定期預金

積立定期預金は金融機関が取り扱う商品で、自分で決めた一定額を定期的に積み立てていき、満期日に利子を含めた金額を受け取れます。積立金額も毎月1000円から指定が可能で、一定額が貯まった後に定期預金などにするケースが一般的です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA

非課税で運用できる、iDeCo(個人型確定拠出年金)や少額投資非課税制度のNISA、といった方法で老後資金を貯めるのも方法の一つです。iDeCoは私的年金の一種で、会社員や公務員の拠出期間は65歳までと定められています。それに対しNISAは、日本に住む18歳以上の人なら利用に制限がなく対象者が幅広いです。

個人年金保険

民間の生命保険会社などが取り扱っている、個人年金保険へ加入するのも老後資金を貯めることが期待できる方法です。個人年金保険とは任意加入の私的年金制度で、60歳や65歳といった所定の年齢まで保険料を積み立てていきます。そして、契約時に設定した受取開始年齢以降に、積立金をもとにした年金を一定期間または終身にて受け取ることで、公的年金の不足分のカバーに役立ちます。

早いうちから老後資金の目標を立てて資産形成に取り組もう

教育費や住宅ローンの支払いに限界を感じていて「老後資金を2000万円貯めるなんて難しい」と考える人もいることでしょう。しかし、40歳代や50歳代から老後に備えて2000万円を貯めることはできないわけではありません。毎月の支出の見直し、収入源を増やすといった方法で手元に残るお金を増やせたら、定期預金に回すなどの方法を前向きに検討していきましょう。

出典

金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)
ベンチャーサポート相続税理士法人 老後資金と働き方の調査
株式会社ホロスプランニング 老後2,000万円問題アンケート
国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」 (第14図)年齢階層別の平均給与

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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