“アズムン封じ”がイラン戦の最重要ポイント。タレミ不在も油断は禁物。「伊東離脱の影響で苦戦」と言わせないためにも...【アジア杯】

伏兵ヨルダンと優勝候補の韓国が、アジアカップのベスト4に駒を進めるなか、日本代表は現地2月3日、最大の関門と目される準々決勝のイラン戦を迎える。

両国は同じ中2日だが、1月31日のラウンド16・シリア戦で120分間+PK戦を戦ったイランの方が、より消耗度が激しい。加えて、攻撃のキーマン、メフディ・タレミが出場停止で、守備陣にも複数の怪我人が出ていることもあり、イラン人記者も「日本が2-1か2-0で勝つ」と口を揃えている。

伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)がチームを離脱し、旗手怜央(セルティック)の負傷欠場が濃厚な日本も厳しい状態なのは確かだが、森保一監督は「誰かがいなくなったから(困る)というチーム作りはしていない」と前日記者会見でも強調。堂安律(フライブルク)や守田英正(スポルティング)らが確実に穴を埋めてくれるだろう。

一方で、ここまでの4試合で一度もクリーンシートがなく、強固な守備の構築も次戦の重要テーマの1つ。とりわけ相手には、5年前の前回アジアカップで長友佑都(FC東京)が「大迫(勇也=神戸)と彼はアジアでは頭1つ抜けている」と評したサルダル・アズムンがいる。

その後、アズムンはゼニトからレバークーゼン、ローマへとステップアップ。チャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)の経験も豊富。紛れもなくイランの絶対的エースに成長したと言っていい。

今大会はまだ初戦・パレスチナ戦の1得点だけだが、グループステージ3戦目のUAE戦では、タレミの2ゴールをアシスト。自らも数多くの得点機に絡んでいて、存在感は抜群だった。

「20番のトップの選手がパワフルで、そこまで大きいわけじゃないけどキープ力があって、そこからのセカンドボールの展開、前への強さ、力強いシュートがある。失点確率を下げるためにも、彼を抑えることが大きいと思います」と守護神・鈴木彩艶(シント=トロイデン)も警戒心を露にしていた。

そこで心強い材料となるのが、今の日本代表にアズムンと対戦経験のあるDFが複数いること。前回大会ではイランと準決勝で対戦し、3-0の勝利。アズムンも出場していた試合で、ピッチに立っていたのは冨安健洋(アーセナル)だ。

また昨季のブンデスリーガで板倉滉(ボルシアMG)や伊藤洋輝(シュツットガルト)、ELで顔を合わせた町田浩樹(ユニオンSG)も対戦していて、“アズムン対策”のすり合わせは入念に行なわれたはずだ。

「相手の攻撃陣の良さを見ても、デュエルや空中戦のところは多くなると思うので、まずそこはしっかり勝っていかないといけない」と板倉が言えば、町田も「しっかりチャレンジ&カバーをして、ライン設定を高く持ってやることが大事。バーレーンも2トップでデカい相手を当ててきても、難なく対応できていた。あとは弾いた後のセカンドボールを拾えている試合は、自分たちが主導権を取れている。そこは継続してやっていきたいと思います」と具体的なイメージを口にしていた。

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選手たちが想定するように、リスタートやハイボールにやや不安が見える日本の守備に対し、イランは徹底的にそこを突いてくるだろう。タレミ不在の今回、彼らはアズムンと同じ長身FWカリム・アンサリファルドの2トップで来る、あるいは左サイドで今大会2ゴールを奪っているメフディ・ガエディを中央に配置し、セカンドトップ的に使うといった予想が飛び交っている。

実際のところはふたを開けて見ないと分からないが、誰が出ても日本が確実に主導権を握れれば、そう簡単に失点することはないだろう。

「明日の試合は自分たちがボール持つ時間を長くするのが一番良い。相手がどう出てくるかは分からないですけど、攻から守、守から攻の切り替えの部分が1つ、キーになると思います。

イランは前の方にすごく良い選手が多いし、トップ下とフォワード、アカッターが真ん中での崩しをしたり、ワンツーで中に入ってきたりすることも結構ある。僕はディフェンスラインの前に立って、フィルター役をしっかりこなせればいいと思ってます」

攻守の要・遠藤航(リバプール)も前日練習後にこうコメント。アズムンを軸とした中央突破、コンビネーションを寸断するようなポジショニングやボール保持、ゲームコントロールを心掛けていくという。

彼らが自分のタスクを確実に遂行すれば、アズムンが仕事をする回数も自ずと減り、失点リスクも低下する。そういった試合巧者の戦いができれば、多くのメディアが予想するような日本勝利の結果で終わるに違いない。

イラン戦は相手のエースFWと日本守備陣の攻防に注目しながら見守ることが肝心。とにかく今回は無失点というハードルをクリアし、首尾よくベスト4入りを果たすべきだ。

「伊東純也の離脱の影響で苦戦した」と言われないように、日本代表の意地と誇りをしっかりと示したうえで、次のステージに進むこと。それがイラン戦のノルマである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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