「ノリアキは少し老けたが…」51歳初Vを飾った葛西紀明の健在ぶりに海外盟友が感嘆「ジャンプを楽しんでいるなら、飛ばせてあげて」

衰えを知らぬスキージャンプ界のレジェンドに驚愕の声が寄せられている。

2月3日、ノルディックスキージャンプの「TVh杯」が札幌・大倉山ジャンプ競技場で行なわれ、32年前のアルベールビル五輪を知る最後の”現役選手”葛西紀明(土屋ホーム)が合計224.4点で逆転優勝。50代で史上初めて国内大会優勝を飾る快挙を達成した。

葛西は1回目125メートルで4位につけ、表彰台を射程圏内に捉える。すると2回目は、130.5メートルにまで距離を伸ばして順位をアップ。優勝が決まった瞬間、「やったー!」と雄叫びを上げた鉄人は2022年の雪印メグミルク杯以来、国内2シーズンぶりとなるタイトルを手中に収め、破顔一笑だった。

トップパフォーマンスを維持し続ける鉄人の健在ぶりには、かつてのライバルも舌を巻いている。

世界選手権では4つの金メダルを獲得。五輪では銀3つ、銅1つのメダルを持ち「ポーランドの英雄」と称された元スキージャンプ選手のアダム・マリシュ氏は欧州スポーツメディア『Eurosport』ポーランド版のインタビューに応じ、いまだ現役選手であり続ける51歳の日本人について「彼は少し老けたが、ジャンプを楽しんでいるのなら、飛ばせてあげればいい」と語っている。
1972年生まれの葛西より5歳年下の同氏は先月、札幌で開催されたコンチネンタル杯(HTB杯)でトップ10入りしたことに触れながら、「ノリアキのことはずっと好きだよ。彼はナイスガイで、とても冷静な男だ」と評す。

葛西とのエピソードのひとつとして、「バンクーバー五輪のときにノリアキと代表ジャケットを交換したんだ。そして今、私は日本代表のジャケットを家に飾っていて、彼はポーランド代表のジャケットを持っている。いい記念になったよ」と笑顔で語り、葛西の「陽気で明るい、親しみのある笑顔が多くのジャンパーを魅了する」と説いた。

オリンピックをはじめ、世界選手権やワールドカップ(W杯)など多くの国際大会で日本のレジェンドとしのぎを削ってきたマリシュ氏は同メディアから「カサイがまだジャンプを続けているのはなぜか?」という誰もが気になる質問を受けると、「わからないよ」と一蹴するも、「日本人は欧米人よりも神経質に生きていないのかも。ノリアキは元気そうだし、まだ自分の体を大事にしているのが分かる」と持論を展開する。

「私がノリアキを最後に見た時、彼は少し老けていたが、もしノリアキがジャンプを楽しんでいて体調がいいのなら、それでいいじゃないか。私は精神的にも肉体的にも、もう十分だと思ったときにキャリアを終えた。それに何人かの選手を見ていると、彼らの疲れ具合やジャンプを見ていると、私は正しい時期に引退できたと思う。とにかく私は長い間、平均的ではなく、いいジャンプをしたときに現役を退こうと自分に言い聞かせていた」

葛西はコンチネンタル杯で2月17、18日に開催されるW杯札幌大会の日本代表入りを決めている。16日の予選を突破して本戦に進めば、史上初となる50代での出場というスキージャンプ界の金字塔をまたひとつ刻み込む。マリシュ氏は最後に、W杯最多出場(569回)のギネス記録更新にも期待がかかる盟友に「彼の健闘を祈っているよ」と母国からエールを送っている。

スキージャンプ界の常識を次々と塗り替えるレジェンドの動向は、海外も無視できないほど稀有な存在となっている。

構成●THE DIGEST編集部

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