能登地震、道路寸断が阻む救助 兵庫でも道路沿い建物の耐震化進まず 補助制度活用も1件のみ

道路の片側をふさいだ倒壊家屋=1月21日、石川県輪島市(撮影・笠原次郎)

 能登半島地震では、被災地の主要な道路が寸断されたため、救助や支援物資の輸送が遅れ、集落の孤立も相次いだ。兵庫県内でも災害時の「緊急輸送道路」が指定されているが、ルートを確保する対策は不十分だ。道路沿いの建物の耐震工事を進める県の補助制度は、10年間でわずか1件しか活用されておらず、対策が急がれる。

 能登半島地震では道路の隆起や崩落のほか、倒壊した建物が道をふさぐなどし、発生当日に向かった「緊急消防援助隊」は被害の大きな地域になかなか入ることができなかった。その後も支援物資の輸送やライフラインの復旧遅れ、被災者の生活環境の悪化などを招いた。

 兵庫県は地域防災計画で、高速道路や国道、県道など533路線を「緊急輸送道路」に指定しているが、総延長約3千キロの対策は十分に進んではいない。

 県建築指導課は、倒れれば道路をふさぐ恐れがある1981年以前の旧耐震基準の建物を対象に、耐震工事の補助制度を設けている。しかし、協調して実施しているのは全41市町のうち神戸、芦屋の2市のみ。ほかの市町では使えない上、2市での利用も2013年度以降で1件だけと低迷している。

 芦屋市は「対象の建物はほぼない」とするが、神戸市の担当者は「耐震化が必要な建物は残っているとみられるが、所有者が複数いる共同住宅など費用の問題から合意形成が難しい」と話す。神戸では国、県、市で費用の3分の2、最大4千万円を補助するが、相談もほとんどないという。

 山間部が多い県北部の豊岡市は2020年、「強靭化地域計画」を策定。「緊急輸送道路沿道建築物の倒壊を防ぐため、耐震化を促進する必要がある」と明記したが、助成制度は導入していない。住宅の耐震化率は20年度時点で74%と県平均より10ポイント以上低く、担当者は「限られた予算の中で、個々の住宅の耐震化を優先している」とする。

 橋梁やのり面の対策も課題だ。県は県管理の181路線計約1500キロの対策を進めるが、橋では28年度までに計画通り進んでも、15メートル以上の677カ所のうち109カ所(16%)で、大きな地震時に通れなくなる可能性がある。

 道路のり面の防災対策は、28年度までに380カ所を計画するが、点検のたびに対策が必要な場所が新たに見つかる状況だ。

 ほかに道路の2車線化なども進めるが、「自然相手の対策は難しいところがある」と県道路保全課の田中孝行主管。1月24~30日に被害が大きかった石川県珠洲市で道路の被害調査をしたが、のり面対策をしていても、山が崩れて道路をふさいだ場所を確認したという。ただ、田中主管は「対策をしていれば崩れ方が違い、効果がないわけではない。兵庫県でも対策を急がなければならない」とする。(高田康夫)

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