YOASOBI、ライブバンドとしての実力を発揮 驚きの演出も飛び出した『POP OUT』初日レポ

YOASOBIの全国ツアー『YOASOBI ZEPP TOUR 2024 “POP OUT”』が1月25日、東京・Zepp Haneda (TOKYO)で幕を開けた。昨年4月から6月にかけて行われた全国アリーナツアー『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』を成功させ、『SUMMER SONIC 2023』をはじめとする大型フェスでも強烈な存在感を示したYOASOBI。キャリア初となるZeppツアーの初日では、ライブバンドとしての高いポテンシャル、そして、さらに進化したエンターテインメント性を見せつけた。

ド派手なレーザーライトとエレクトロ系のSEとともにikura、Ayase、バンドメンバーが登場。「『YOASOBI ZEPP TOUR 2024 “POP OUT”』へようこそ!」というikuraが叫ぶと、冒頭からアッパーチューンを次々と放ち、フロアを埋め尽くしたオーディエンスの高揚感を一気に引き上げる。圧倒的な疾走感とドラマティックな展開を共存させたバンドサウンド、起伏に富んだメロディが響き渡る「祝福」によってライブは早くも最初のピークへ到達。〈誰かが選んだステージじゃなくて/僕たちが作っていくストーリー〉というフレーズが、スタンディング会場のライブの気持ちよさをさらに増幅させていた。ご存知の通り「小説を音楽にする」というコンセプトから始まったYOASOBIだが、観客と近い距離で演奏することで新たな意味が生まれるーーそのこともまたZeppツアーの大きなポイントだろう。

最初のMCでikuraは、Zeppツアーを開催した理由を説明。ひとつめは「一人ひとりの顔を見て、できるだけ近い距離感でライブをしたいこと」、ふたつめは「ライブバンドとしてのYOASOBIを存分に味わっていただけるのはやっぱりライブハウスなのかなと」。さらに「みなさん自由に楽しんでもらえたらなって。音楽を通して心でつながって、最高の夜を共にしたいと思っているので、最後までよろしくお願いします!」と呼びかけるとフロアからさらに大きな歓声が沸き起こった。

ここからは手拍子やシンガロングを交えながら、音楽を介した心地よい一体感を生み出していく。「一緒に歌って踊って、上がっていきましょう!」(ikura)という言葉から始まった「ミスター」では、心地よいファンクネスをたたえたバンドグルーヴによって観客がゆったりと身体を揺らす。やまもとひかる(Ba)のスラップベース、AssH(Gt)のカッティング、ミソハギザクロ(Key)の色彩豊かな鍵盤のフレーズ、仄雲(Dr)のしなやかなビートによるアンサンブルも絶品だ。

ここで一旦メンバーが引っ込み、大きなスクリーンが出現。ドラゴン、ユニコーンのかわいいキャラクターが映し出され、入場時に配られた3Dメガネ着用のアナウンスが行われた。ここからは3DCG使ったステージへ。楽曲の世界観やストーリーとリンクした立体映像とともにYOASOBIの楽曲を体感できる演出は、いわば“最新テクノロジーを駆使した飛び出す絵本”だ。

特に印象的だったのは、「もしも命が描けたら」。歌詞が立体的に浮かび上がり、紅葉をモチーフにした背景がゆったりと動く。奥深い物語やメッセージを視覚、聴覚の両方でダイレクトに堪能できるこの曲からは、YOASOBIが3D演出を取り入れた意図をしっかりと感じ取ることができた。それにしてもZeppツアーでここまでクオリティの高い3D映像を体験できるとは。「どうやったらみんなにドキドキワクワクしてもらえるだろうかと考えて。“POP OUT”というテーマ性とかけて、実際にPOP OUTさせてみました!」(Ayase)というコメントからも、この演出に対する強い自信を窺うことができた。

バンドメンバーを紹介したAyaseは「『電光石火』ツアーを去年やって、海外でも公演をやらせてもらって、バンド力を高めて参りました。いろんな国のいろんなファンのみんなに会って、エネルギーをもらってパワーをもらって、ここに来ました。それでもやっぱり日本が最高だなって俺は思いたいんだけど、いけるか東京!」とオーディエンスを煽りまくる。思春期にラウドロックに傾倒し、ライブハウスシーンに強い思いを抱いてきたAyase。彼にとって今回のZeppツアーは、ライブバンドとしてのYOASOBIの強さを証明するための意義深いチャレンジなのだと思う。

大歓声を浴びながら、「OK、その調子でいきましょう。完璧で究極な1日にしましょう!」と語り掛けたAyase。その直後に放たれたのは、もちろん「アイドル」。勇壮かつドラマティックなSEから始まった世界的ヒットチューンは、「オイ! オイ!」というコール、激しく振られるペンライトの光を伴い、熱狂的な盛り上がりを生み出した。アイドル文化を極限まで詰め込んだ楽曲をまさに“完璧”に表現するikuraのボーカルとダンスもすごい。パフォーマーとしての彼女の資質もまた、このツアーでさらに進化することになりそうだ。

ライブの終盤、ikuraは改めて『POP OUT』(飛び出す、飛び出る)に込めた思いについて話した。小説の世界を音楽にするところから始まって、そこから飛び出し、こうして近い距離でライブができていること。4年前にネットの世界で発信し始めて、みんなで一緒にパンデミックを越えて、ついに家を飛び出して、やっと会うことができたこと。3D演出など、誰もが観たことがないような新しい世界を表現したいという思いーー。

「日常から飛び出していけるようなツアーにできたらいいなって、みんなで考えてこの名前をつけました。YOASOBIはこれからもどんどんPOP OUTしていきます!」と宣言すると熱気と汗に溢れたフロアから、この日一番の大きな歓声が沸き起こった。

この日のライブのなかでYOASOBIは、10月、11月に京セラドーム大阪、東京ドームでワンマンライブ『YOASOBI DOME LIVE 2024』の開催を発表した。Zeppツアー、『コーチェラ・フェスティバル 2024』への出演を経て、ドーム公演へ。2024年はYOASOBIにとってまさに“POP OUT”な1年になりそうだ。

(文=森朋之)

© 株式会社blueprint