ウクライナ侵攻から2年…プーチン大統領が目論む「強制的停戦」とは 待ち望むトランプ氏の返り咲き

ロシア・プーチン大統領/ververidis(c)123RF.COM

2024年になって早くも2月となったが、今月でロシアがウクライナに侵攻してからちょうど2年となる。新型コロナが世界中で猛威を振るう中、プーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻を決断し、ロシア軍がウクライナの東部と北部から進軍を開始した。プーチン大統領はこの時、ロシア軍が短期間のうちに首都キーウを掌握し、ゼレンスキー政権を崩壊させ、親ロシアの傀儡政権を樹立することを狙っていた。

しかし、米国を中心とする欧米諸国のウクライナへの軍事支援が強化されるにつれ、キーウの掌握どころか時間の経過とともにロシア軍の劣勢が顕著になり、何とかウクライナ領土に踏みとどまることが限界となった。2022年の秋頃にプーチンが一部国民の動員を決定したことも、ロシア軍の劣勢を強く裏付ける。

だが、ロシア軍が東部や南部の一部地域を実行支配する状況は続き、ウクライナ軍もロシア軍をウクライナ領土から追いやるには至っていない。昨年夏、ウクライナ軍は軍事的攻勢を強めたが、ロシア軍の粘りに直面し、一進一退の状況が今日でも続いている。

そして、時間の経過とともに欧米諸国のウクライナ支援にも陰りが見え始めている。米国のバイデン政権は、ウクライナ戦争を民主主義と権威主義の戦いと位置付け、ウクライナ支援を継続する重要性を強調しているが、米国民の間でそれへの支持は減少する一方で、秋に大統領選を迎えるバイデン大統領は難しい舵取りを余儀なくされている。

今後の行方は、プーチン大統領にとって有利な状況だ。ロシアでは3月に大統領選が行われるが、プーチン大統領の再選は確実視されており、同氏はここで2030年までの政権運営という新たなお墨付きを得ることになる。また、米国のウクライナ支援にも陰りが見える中、米国では11月に大統領選が実施されるが、トランプ前大統領が勝利するシナリオが現実味を帯び始めており、プーチン大統領はそれを待ち望んでいる。

トランプ前大統領は、24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる、最優先でウクライナ支援を停止すると断言しており、大統領に返り咲けば真っ先にゼレンスキー大統領に停戦を呼び掛けるだろう。呼び掛けるというより、それしか解決策はないと圧力を掛けると言った方がいいかも知れない。プーチン大統領はトランプ氏の勝利となった直後から同氏に接近し、停戦の話を持ちかけ、ウクライナを説得するよう求めるだろう。

正に、これは「強制的停戦」と言えるものだ。それで得をするのは米国とロシアであり、ウクライナにとってはこの2年間の戦争での敗北を意味する。そして、停戦といってもこれは終戦に向けての停戦を意味しない。プーチン大統領は、一度停戦するがいずれはウクライナ掌握に向けて軍事作戦を再開すると考えている。ウクライナの属国化をプーチン大統領が諦めることはない。

◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。

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