「まさか全員男の子?」と言われてモヤる3兄弟の母、「女の子じゃないとダメ?」と息子に聞かれ

3人の男の子の母だが、「うちは女の子がふたりで、すごくいい」と自慢をしてくるママ友、「うちの嫁は女の子しか生まないから、うらやましい」と言ってくる近所のおばさん。今だにそんなことを無神経に口にする人がいるのか。

人の口に戸は立てられない。その人の意識が変わらなければ、発言を阻止はできないから、あとはどう考えるかが問題となる。今なら、SNSで憂さ晴らしもできるだろう。本気で受け止める必要などないのだ。

男児3人、「女の子を産みなさいよ」

男の子がふたり生まれた段階で、第三子はあきらめようと思っていたマユさん(40歳)。だが自身が3人きょうだいだったこともあり、もうひとりほしい、もうひとり生めば女の子かもしれないと思って挑んだ第三子だった。ところがまたも男の子。 「性別にそれほどこだわったわけではないんですが、ひとり女の子がいたらいいなという気持ちでした。夫も『元気ならいいよ、どっちだって』というタイプ。近所に住む義父母も『3人いたらにぎやかでいいな』と言っていました。だから男の子だとわかっても誰もがっかりしなかった」 現在は、8歳、6歳、4歳の「メンズトリオ」がいて、家の中は年中、散らかり、マユさんはどんどん地声が大きくなっていくと笑う。 「家族で出かけることも多いんですが、近所でも有名な元気な兄弟です。ただ、どこにでもいるんですよね。『女の子はいいわよ』という人が」

「女の子じゃないとダメなの?」と長男

つい先日も子どもたちを連れて、少し離れた大きな公園に行ったのだが、そこで普段はあまり話す機会のない、子どもの習い事関係の知人に会った。 「同世代の彼女は走り寄ってきて子どもたちを見るなり、『3人? すごいわねえ』と妙に感心してみせた。そして『まさか全員男の子? 大変でしょう。うちは女の子ふたりだけど、いいわよ、女の子』と女の子自慢。 さらに『男の子は結婚したら奥さんの実家にばかり行くのよね。でも女の子は親のことも気にかけてくれる』って。まあ、そんな先の話はどうでもいいので、右から左に聞き流していたんですが、『ね、生みなさいよ、もうひとり。今度こそ女の子だから』って。何の根拠があるんだかわからない」 彼女が去ってから、長男が「女の子じゃないとダメなの?」と聞いてきたので、マユさんはハッとした。子どもの前であんなことを言うなんて無神経だと初めて怒りがわいたという。 「夫がすかさず、『そういうことじゃないよ。あのおばちゃんが女の子が好きなだけ』とさらっと言いました。息子は『ふうん』と。思わず『ママは○○くんが大好き』とぎゅうっと抱きしめたら、『やめてよ、ママ』と笑いながら逃げられました」 大人が何の気なしに発した言葉が、子どもには気にかかることもあるのだろう。自らも気をつけなくてはとマユさんは感じたそうだ。

男の子礼賛の声にも戸惑う

一方で、やたらと「男の子ばかり3人。いいわねえ、やっぱり男の子よね」と言われることもあり、マユさんは戸惑うという。 「私の実家は遠方の田園地帯。本当に田舎で何もないところなんですが、夏休みなどは息子たちは大はしゃぎです。 去年の夏は、息子3人、2週間も実家にいました。私も夫も仕事が休めなかったので、合間に日帰りで代わる代わる様子を見に行っただけ。毎日泥だらけで遊んで、夜は早く寝ていたようです。両親には大変な思いをさせてしまいましたが」 夫婦で息子たちを迎えに行った日、近所の知人が出てきて、「すごいわねえ。男の子3人、将来が楽しみね」と目を輝かせた。それもまた返事に困ったとマユさんは言う。 「まあ、たまたまそういうことになっただけでと曖昧に言っていたら、その人が『うちの嫁は男の子が生めなくて』って。そういう言い方はないですよね。 『いいじゃないですか、姉妹ってかわいいし』と言うと、『だって将来はよその家の嫁になるのよ。誰がうちを継ぐの』ですって。知らんがなという話ですよね。その家の“お嫁さん”だって、人の家の娘さんだと意識しているんでしょうかね」

わざわざ不快なことを言う人の目的は?

うちも3人目を生めって言ってるの、でも3人目も女の子だったら絶望的よねと、その人は笑った。 「不快でしたね。実家の近所だから母とどういう関係かわからないけど、『子どもが男だろうと女だろうと、かわいいことに変わりありませんよ。姑がそういうこと言うなんて、あなたの言うお嫁さんが気の毒だわ』と言ってしまいました。 夫がやめろと目で合図したときはすでに言い終わったあと(笑)。その人は顔色を変えて去っていきました。 そこへ両親が出てきたので、『こんなこと言っちゃった』と言うと、母が気にしなくていいから、あの人はそういう人なのって。母も適当に距離を置いて付き合っているみたいなのでよかった。夫には『あとからお義母さんが何か言われないか心配だ』と言われちゃいましたが、我慢できなかったんですよね」 他人の家族構成、子どもの性別などどうでもいいことなのに、自らの考えを押しつけたり、その結果、息子の妻をおとしめたり……。人はどうして、そういう無用なことをするのだろうとマユさんは苦笑いしながら言った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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