進まぬ水道管の耐震化 総延長450キロの町「1年1キロ交換できるか…」 離島や山間部多く全国平均を大きく下回る鹿児島県

液状化の影響でゆがんだ街並み。道路や家屋が傾いている=1月24日午後、石川県内灘町西荒屋(画像は一部加工しています)

 能登半島地震では断水の長期化が生活再建の妨げとなっている。石川県は基幹的な水道管の「耐震適合率」が全国平均より低かった。山間部や離島に人口が分散する鹿児島県はさらに下回る。水道管の耐震化に多額の費用を要し、過疎地域で維持コストも高いことが背景にある。識者は、災害時の拠点となる避難所や病院への供給ラインの耐震化を優先して進めるべきだと指摘する。

 石川県の輪島市や珠洲市では道路と配水管が広範囲に損傷し、壊れた場所の調査や修繕に時間がかかっている。

 耐震適合率は基幹的な水道管のうち、その場所で想定される最大規模の地震に耐えられる割合を示す。厚生労働省によると、2021年度末時点の耐震適合率は石川県が36.8%。鹿児島県は29.2%で全国平均41.2%を大きく下回る。最も高いのは神奈川(73.1%)で東京(66.0%)、千葉(60.3%)と続く。最も低いのは高知県(23.2%)で地域差が大きい。

 さつま町は配水支管を含む水道管の総延長は450キロに及ぶ。耐震適合率は5%に満たない。同町鶴田では1月下旬、直径40ミリの新しい配水支管が敷設された。水道管の耐震化に毎年度約1億円を充てるものの、町水道課の出水隆課長は「1年で1キロ交換できるかどうか」と説明する。

 水道料金を4月から値上げする。しかし、水道事業の赤字解消が目的で耐震化費用は変わらないという。資材や業者への委託料は年々上昇し、耐震化できる水道管は限られる。出水課長は「地震による大規模断水では周辺自治体との連携で対応するしかない」と危機感をにじませる。

 鹿児島市は耐震適合率52.1%で全国平均を10.9ポイント上回る。31年度までに事業費57億円をかけ主要な水道管23キロを耐震化し耐震適合率を56.8%に引き上げる。市水道局の福永修三水道整備課長は能登半島地震の現状を受け「耐震化によるハード面とともに緊急時の応急給水活動などソフト面での対応が必要となる。断水の長期化には複合的な要因があり、対策を検討したい」と語る。

 能登半島地震では耐震化された水道管が破断したことも明らかになっている。

 鹿児島大学の岩船昌起教授(災害地理学)は東日本大震災では盛り土や切り土の境目で水道管やガス管の破損が集中したと説明。被害が出やすい地形を意識することに加え、「避難所や病院など自治体の地域防災計画に定める給水拠点の耐震化を優先して進めるべきだ」と指摘する。

〈関連〉配水支管の耐震化工事をする作業員=1月26日、さつま町鶴田

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