乃木坂46、5期生の先頭を走ってきた井上和と中西アルノの成長と活躍 6期生へ繋ぐバトン

乃木坂46が6期生の募集開始を2月2日に発表した。

3年ぶりとなる今回のオーディションでは、「世界は、ほんの一歩で変わる。」をテーマに掲げ、初の試みとして春・夏の2回にわたって実施される。オフィシャルサイトには「春組」「夏組」の棲み分けがされており、正規メンバーとして加入後も、たとえば6期生の「春組」というような紹介のされ方がしばらくは続くのかもしれない。

今回の6期生オーディションは、1月28日深夜放送の『乃木坂工事中』(テレビ東京系)にて、オーディション自体を示唆するティザー広告が「2024年2月2日」「世界は、ほんの一歩で変わる。」というキャッチとともにオンエアされていた。それと連動するようにして流れていたのが、「あれから、2年」という文字とともに5期生が2月2日にデビューから2周年を迎えることをお祝いする映像。そして、6期生オーディション告知ムービーにて、まだ見ぬ未来のメンバーの手を引くのは5期生の井上和だ。

2022年2月2日。メンバーお披露目の位置づけとなるプロフィール動画のトップバッターとして公開され、大きな反響を呼んだ井上。初の5期生曲「絶望の一秒前」ではセンターに立ち、早くから5期生の顔として11人の中心を担ってきた。『乃木坂工事中』や『乃木坂スター誕生!』シリーズ(日本テレビ系)でもライブパフォーマンスやその歌唱力が絶賛されていた井上だが、その裏では人一倍の涙を流してきたことも事実だ。加入当初から混在していた向上心と謙虚さ。そんな彼女にとって大きなターニングポイントとなったのが、表題曲センターに立った33枚目シングル『おひとりさま天国』とその夏に開催された『乃木坂46 真夏の全国ツアー2023』だった。

1期生、2期生が卒業し、3期生、4期生、5期生のみで初めて全国をまわるツアーの座長としてグループを牽引。生駒里奈に始まり、賀喜遥香に至るまで、歴代のセンターが担ってきた大役を井上は見事に務め上げた。本編ラスト、井上の威勢のいい煽りでスタートした「おひとりさま天国」は2023年の乃木坂46を象徴する形であり、その姿は年末の『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)でも提示することに成功した。

ツアー後日のインタビューで、「逃げたいという気持ちから抜け出すことができました。そして、自分のことを少しだけ好きになれた気がします」と答えた井上(『日経エンタテインメント!』2024年2月号より)。ツアーのMCにて、「誰かの期待に応えられるような、希望を与えられるような人になりたい」「乃木坂46が頑張る理由になれるように」と自身の気持ちを素直に言葉にしていた井上は、多くの人の憧れとして次の世代に手を差し出す存在となっている。

5期生で表題曲のセンターに立ったメンバーはもうひとりいる。それが中西アルノ。井上とは“アル和”コンビとして共通点も多く、互いに相談し合う仲として知られているが、この2年間は対照的な歩みを進めてきたふたりでもある。そのひとつが、「絶望の一秒前」が収録された29thシングル『Actually…』で中西がセンターに抜擢されたことだ。『Actually…』のリリースは2022年3月23日と、今振り返っても驚くほどの早さだが、ここで中西、ひいてはグループに対して強烈なアゲインストが吹くことになる。

中西がメディアへと完全に浮上してくるまでにはかなりの時間を要することになるが、歌唱力をはじめとする抜群のパフォーマンス力、落語すらも披露してしまう芝居力、知識量とトークの引き出しの多さ、そしてクイーンに輝く“どんくさ”といった中西自身の魅力は、2023年に入ってから一気に爆発していった。今年の3月でレギュラーになってから一年が経つ『NHK俳句』(NHK Eテレ)では「青山ネモフィラ」の俳号で共演者も実感するほどの成長を見せ、『Spicy Sessions』(TBS チャンネル1)ではその伸びやかな歌声を響かせている中西。彼女が真に変化するきっかけとなったのが、アンダー楽曲「思い出が止まらなくなる」のセンターと『34thSGアンダーライブ』での座長の経験だった。

32ndシングル『人は夢を二度見る』からアンダー楽曲に合流した5期生のなかで、アンダーセンターに立つのは中西が初。つまりは5期生がアンダーライブの座長を務めることも初めてということになる。『33rdSGアンダーライブ』を顕著に、パフォーマンスの中心メンバーだった中西が座長となるのは納得の流れであり、『34thSGアンダーライブ』もまた白眉のステージングだった。「思い出が止まらなくなる」はもちろんのこと、楽曲の色としては真逆とも言える「Actually…」は選抜メンバーにも劣らない、気迫に満ちたパフォーマンスに。何よりも座長としてのMCのなかで中西が言った「乃木坂46って最強なんですよ」という一言、そして声を震わせながらも自信に満ちた声で伝えた「私たち14人は選ばれてこのステージに立っています。私は今ここにいることに誇りを持っています」という言葉。2年前のあの頃、こんな未来がやってくることを想像できただろうか。

乃木坂46の登竜門として、かつて歴代のメンバーが経験してきた『16人のプリンシパル』/『3人のプリンシパル』にあたる『新参者 LIVE at THEATER MILANO-Za』が12月に幕を閉じ、同月に5期生による『超・乃木坂スター誕生!LIVE』の開催、さらには乃木坂46としてのバトンを受け継ぐことがテーマにある5期生曲「いつの日にか、あの歌を・・・」とグループの1st写真集『乃木坂派』をオマージュしたカットでも話題の2月20日発売の5期生写真集『あの頃、乃木坂にいた』、11人が月替わりで番組MCを務めてきた『乃木坂46の「の」』(文化放送)など、この2月までに5期生に関する話題が収束していることは、デビュー2周年ということは前提にありながら、“6期生オーディション”という5期生が、乃木坂46が次に進むための重要なフェーズだったとも捉えられる。

3月にはさいたまスーパーアリーナにて4日間にわたる『乃木坂46 12th YEAR BIRTHDAY LIVE』の開催を控えている乃木坂46。6期生加入前としてはおそらく現体制ラストの『BIRTHDAY LIVE』になるだろう。12年にわたる乃木坂46の歴史を振り返るライブで、5期生が今のグループを引っ張る存在としてそれぞれの立ち位置で輝いているはずだ。

(文=渡辺彰浩)

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