電動モビリティーを充電で変える! パワーウェーブ<豊橋技術科学大>-大学発ベンチャーの「起源」(92)

マイクロモビリティー向けのワイヤレス給電ユニット(同社ホームページより)

パワーウェーブ(愛知県豊橋市)は豊橋技術科学大学発の電動モビリティー充電インフラベンチャー。電界の変化を介して高周波電力を伝送する電力伝送方式を開発し、電動モビリティーの「置くだけ充電」を社会実装するため、2021年3月に設立した。

停まるだけで即充電

世界的に電気自動車(EV)や電動バイクといった電動モビリティーの普及は進んでいるが、ネックとなるのが充電。専用の充電装置から電源コードを本体に接続して長時間の充電が必要となる。そこで注目されているのが「置くだけ充電」。駐車場や駐輪場の床面に非接触式の充電装置を置き、停車すれば自動的に充電が始まる。

これを実現するために同社が開発したのが「電界結合ワイヤレス給電システム」だ。送信側の電極に高周波電圧をかけて電界を発生させる。この電界が受信側の電極に伝わって電界を変化させることにより、変位電流としてエネルギが伝送される仕組み。

低い周波数で流れる伝導電流とは異なり、空気やアスファルトのような絶縁体を通じてエネルギーを伝えることができるという。広範囲に給電するのに都合がよいシステムで、位置ずれに強いため駐車場での充電も容易。道路に埋設すれば、走行中の給電も可能になる。


EVが抱える課題を解消する次世代充電技術

走行中の充電が実現すればEVの航続距離が大幅に伸びると同時に、充電の手間を削減。主要道路に同社のワイヤレス充電装置が埋設されれば、車載電池は最低限のサイズまで小型軽量化が可能。これによりEV価格の大幅な引き下げが期待できる。

同システムは電圧を高めることで電流を小さくできるため、熱の発生が少ない低損失性を実現。加えて電流による磁界が小さいため、渦電流による誘導加熱も抑制される。同社では50Wから10kWの供給電力量に応じたワイヤレス充電施設の製作と設置を手がけている。

2023年10〜11月に、豊田通商と共同開発した電動キックボード向けの平面給電ユニットで実証実験を実施した結果、ワイヤレス充電のみで合計1000kmの走行ができることが判明した。2024年1月13日から2月12日にかけては、豊橋市内の4カ所で同様の実証実験に取り組んでいる。

今後は道路に埋め込んだ給電システムのみで駆動する、電車のようなバッテリーレスEVの開発などに力を入れる方針だ。これが普及すれば、EVが抱える「航続距離が短い」「充電時間が長い」「大容量バッテリー搭載による車両価格の高騰」の三つの課題を一気に解決できる。これからの電動化社会を支える重要なインフラだけに、成長が楽しみなベンチャーだ。

文:M&A Online

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