短大生は忙しい(2月4日)

 「短大生、30年で84%減」という見出しの記事が、2023年11月26日の福島民報に載った。30年前というと、ちょうど、私が桜の聖母短期大学に着任した年で、知人の大学関係者からは「地方で女子のみの短大はいずれ淘[とう]汰[た]される」と言われ続けて30年たったのだと感慨深い。

 着任して、すぐ気がついたことは、短期大学の教員には短期大学の卒業生がほとんどいないことだ。4年制大学終了後大学院に進学し修士号や博士号を取得して大学教員になっている。自分が経験していない教育課程の学生を教えるという仕事は、最初こそ戸惑ったが、今となってはとても魅力的だ。

 自分の大学時代を振り返っても大学2年生と3年生で記憶にあるのは、学外サークル活動やアルバイトで海外研修の引率をしたことだ。ところが、大学1年生の記憶は、授業の一つひとつまでよく覚えている。高校までの学びが、教科書の知識をどのように効率的にインプットして、試験でどのように的確にアウトプットするのかだったのに対して、大学の授業の一つひとつが、答えのない問いを共有し、学び続けていく学問の世界に誘われ、知的で創造的でワクワクした。

 大学4年では研究者になることを決意し、大学院受験の準備のため研究論文探しに図書館巡りをし、受験予定のいくつかの大学院のゼミに潜り込んでいた。

 考えてみたら短期大学は、自分の経験した大学時代の1年次と4年次の経験に重なる。何しろ短大生は忙しい。入学したら高校までの学びから、大学での探究を軸にした学びへパラダイムシフトをしなければならない。2年次になれば、どのような社会人になるかの準備をしなければならない。平日の時間割は、朝から夕方まで授業で埋まり、授業後はサークル活動やアルバイト、友人たちとの交流をしつつ、課題やレポート作成に勤[いそ]しむ。下手をすると土日も、ボランティア活動や地域貢献活動があり、大学生の特権とも言える長期休暇にもインターンシップや学外実習、海外研修等で休む暇もない。

 忙しい短大生たちの姿を見ていて、なんと意欲的で充実して満足気なのだろうと感動している。そして、その忙しい学生に付き合って教職員も忙しい。丁寧かつ適切な学生対応が求められ、学生たちと真[しん]摯[し]にむきあい、きめ細かな学生支援をしている。とても親身だ。

 さらに教職員は学生たちの保証人である親御さんたちへの対応もしている。我が子の気持ちを受けて様々な要求をしてくる親御さんがいる。その親心にも、一人ひとり親切で丁寧に対応している。

 高校卒業後に、短期集中、中身の濃い実のある学び、そして手厚い学生支援が一人ひとり受けられる、洗練された短期高等教育課程こそが、この予測不可能な時代において、自信を持って社会に貢献できる社会人力を、養成できていると自負している。

(西内みなみ 桜の聖母短期大学理事長兼学長)

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