性的マイノリティの理解促進へ LGBTQ“レインボーパレード” 島根初開催にかけた思い 周囲との違い、孤独感を乗り越え…「私は私でいいんだな」と感じられる社会に

よく耳にするようになった「LGBTQ」という言葉。
しかし、いまいちよくわかっていないという方も少なくないかもしれません。
性的マイノリティについて、多くの人に知ってもらいたいと、島根県松江市であるイベントが行われていました。

「ハッピープライド!」

去年11月。
松江市で大規模なパレードが開催されました。
参加者の多くが身に着けているのが、「虹」モチーフのアイテム。
その名も「島根レインボーパレード」です。

レインボーパレードとは、性的マイノリティ、LGBTQの理解促進や権利実現を訴えるもの。
これまでにも全国各地で開催されてきました。

この日、県内外から松江に集まったのは約200人。
島根県でこの規模で開催されるのは、初めてのことでした。

佐藤みどり さん
「正直、きのうは緊張して、寝つきが悪かったです」

このイベントを企画した佐藤みどりさんも、性について悩んできた1人です。

佐藤みどり さん
「生まれたときは女性で、自分のことは男女どちらでもないかなと捉えていて、恋愛対象は女性です」

戸籍上の性別は、女性。
しかし、幼いころからスカートや赤いランドセルが好きではないなど、周囲との違いに違和感を抱いてきました。

佐藤みどり さん
「生理が来た時に、なぜかわからないんですけど、号泣してしまって。今振り返って思えば、自分が女性だってことをまざまざと認識させられたことがショックだったのかなって思います」

今は自身のセクシュアリティをオープンにしていて、かつて警察官として相談業務にあたっていた経験をいかし、性的マイノリティについて当事者からの相談にのっています。

「LGBTQ」という言葉が世の中に広がってきている一方で、佐藤さんが感じるのは…

佐藤みどりさん
「結婚、出産するのが当たり前でみたいな普通と言われる生き方が重視されているっていう感じがしていて…恋人の存在を異性と偽ったりとか、ちょっとした嘘が積み重なっていくところがあったので、何かしら、深く繋がれていないという“孤独感”はあったと思いますね」

特に島根県ではまだオープンにしづらい空気感があり、生きづらさを感じてきたといいます。

そんな中、パレードを計画したきっかけは…

佐藤みどり さん
「実はパレード自体はもっと先にやろうと思っていたんですが、それを早めたきっかけは、パートナーシップ制度の導入っていうのがありました」

去年10月、島根県は県内の全市町村と共同で島根県パートナーシップ宣誓制度をスタート。
法的な効力はありませんが、性的マイノリティのカップルが共同生活を行うことを宣誓し、県がその宣誓書を受領したことを証明する制度です。
渋谷区の調査によりますと、こうしたパートナーシップ制度は、国内300以上の自治体で導入されているといいます。

レインボーパレードのひと月前。
佐藤さんたち、準備も大詰めです。

佐藤みどりさん
「キーホルダーと、タオル、トートバッグとか。レインボーパレードのクラウドファンディングの返礼品の梱包作業をしています」

パレードの資金を集めるためクラウドファンディングを実施し、見事、目標金額を達成!
200人以上から支援金160万円が集まりました。

準備を始めておよそ1年。
佐藤さんの周りには、パレードへの思いに共感し協力してくれる仲間もできました。

パレード実行委員 五百川紘世さん
「社会全体として考えていかなければならない課題であると感じたので、私も当事者ではない目線から一緒に参加して、声を上げていかなければならないなと」

そして、仲間と作り上げたパレードがいよいよ、スタート!
200人を超える集団が、松江の街を練り歩きます。

手には「多様性を島根に」のメッセージ。
身近に性的マイノリティがいることを知ってほしいという思いを、やわらかい雰囲気で伝えるのがイベントの目的です。

参加者
「気づいた時には沿道の方が向こうから手を振ってくれていました。うれしかったです」

沿道には、パレードに向かって手を振ってこたえる人や、大きなOKサインを出す人も!
あたたかい空気に包まれながらパレードは進みます。

パレードを見た街の人は
「生きやすい世の中になるんじゃないかなと。そういうきっかけになるパレードなのかなと思いますね」
「だんだん変わるんじゃないですか?若い人が中心になっていくから」

そして、スタートから1時間半後。
パレードは、無事ゴール・松江城に到着しました。

佐藤みどり さん
「みなさんお疲れ様でしたー!」

参加者からは拍手が。
佐藤さんもほっとした様子です。

佐藤みどり さん
「もう達成感しかないですね。パレードをしようと思ったときは、『何のためにやるんだ』みたいな否定的な意見もありましたけど、性的マイノリティの存在の認知にはつながっていくと思うので。いろんな人が『私は私でいいんだな』ということを感じてもらうような社会が作れたらいいなと思います」

性的マイノリティを含めて、誰もが暮らしやすい社会を目指して。
佐藤さんの活動は、これからも続いていきます。

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