光源氏は中流貴族の人妻との関係に苦悩した!平安貴族の男性が考える理想の女性とは!?【図解 源氏物語】

女性談議に刺激されて・・・・・・(帚木)

長雨の続く夜、源氏が宮中の自室で宿直(ととのい)をしていると、親友の頭中将(とうのちゅうじょう 葵の上の兄弟)がやってきてました。源氏の持つ女性からの手紙の話をきっかけに女性論を語り出し、「中流の女性は趣(おもむき)があってよい」などと言います。そこに、左馬頭(ひだりのうまのかみ)と籐式部丞(とうしきぶのじょう)も訪れ、どちらも恋愛経験が豊富で弁も立つので、女性談議に花が咲きます(「雨夜の品定め」)。

左馬頭は中将の話を受け、「中流にこそ風情がある女性がいる」と話し、良妻選びの苦労などを語ります。話は女性の体験談へと移り、左馬頭は嫉妬深い女性(指食いの女)と浮気な女性(木枯らしの女)の話、中将は本妻の責めに耐えかねて失踪した女性(常夏の女、のちの夕顔)の思い出、籐式部丞は賢い博士の娘の話を披露しました。

翌日、源氏は方違え(かたたがえ)で紀伊守(きいのかみ)の邸(やしき)を訪ねました。紀伊守の父、伊予介(いよのすけ)の家の女たちの噂話を聞くうち、伊予介の若い後妻(空蝉 うつせみ)に興味を抱きます。それはまさしく、昨夜の女性談議に出た中流の女性でした。夜半に聞こえる空蝉とその弟(小君 こぎみ)の会話から、寝所(しんじょ)を知った源氏は忍び込み、抵抗する空蝉をなだめて契りを交わします。その後、源氏は空蝉のことが忘れられなくなり、小君に頼んで再び逢瀬を願いますが、空蝉に拒絶されてかないません。空蝉は、「年配の受領の妻などにならず、実家にいる身であったなら」と複雑な思いを抱えつつ、現実がこうである以上、「情の薄い女」で押し通そうと思い定めるのでした。そして物語は「空蝉」の巻へと続きます。

常夏・・・撫子(なでしこ)の異名で「床」を連想。その女性が撫子の花を贈ってきたから。
方違え・・・凶の方角への移動を避けるため、一時的に別の場所に行くこと。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子 監

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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